前回の連載(「中国人の驚き『日本人は買わない客にも丁寧!』」)では中国社会の金銭感覚について書いた。今回はその続編として、中国社会の「お金持ち」について考えてみる。

 これまで述べてきたように、中国社会は「量」で物事を判断する傾向が強い。お金持ちは「お金をたくさん持っている」が故に社会から丁重に扱われ、尊重される。しかし、その代わり、社会からの要求も大きくなる。

 要求とは何か? 中国ではお金持ちはお金を儲けるだけでなく、使わなければならない。お金を使うのは、お金を持っている人の義務みたいなものである。だから「ケチ」は尊敬されない。そんな話をしたい。

大きな会社は「太っ腹」であるべし

 中国社会では、その人の「持っているお金の量」が、その人が社会でどのような行動をするかを大きく規定する――と前回、述べた。持っているお金の量、つまり経済力の差を「タテの差」、その人の持っている価値観とか考え方、つまり個性の差を「ヨコの差」と表現するならば、中国社会はこの「タテの差」が人々の行動に与える影響が大きい。

 そのため、その人が持っているお金の量によって、その人に対する周囲の見方は変わる。つまり「お金のある人」に対して社会が期待する行動と、「普通の人」に期待する行動は大きく違うのである。

 私がそのことを意識したのは中国で人材採用にかかわっていた時だ。

 例えば、ある人がその会社に入社を決めた理由を聞いていると、大きな企業であればあるほど、会社もしくは経営者個人が「ケチでないから」「お金を大胆に使う太っ腹(中国語で言う“大方=dafang”)な会社だから」といった回答が少なからず出てきた。

 就職の話だから、もちろん業界や職種、企業のブランド力といった要因が基本ではある。しかし、それだけではない。入社を決める決定的な理由に「この会社は気前がいい」という要素が入る。これは日本ではあまりお目にかからない現象である。逆に、「そんな会社や経営者では心配だ」となるのが日本人かもしれない。

 一方、例えば「こんなに儲かっているのに、手当がこれしかない」「大企業なのに、こんな食事しか出さない」といった「ケチだ」「太っ腹でない」会社に対しては、おしなべて中国人の評価は厳しい。つまり「大きい」「儲かっている」ことと、「その会社がやるべきこと」「その会社に対する期待」が密接にリンクしている。まさに「タテの差(=経済力の差)」によって、その企業や個人に求める行動が決まるのである。

 別の言い方をすれば、お金をたくさん持っている会社や個人は相応の支出をするのが当たり前で、それに見合った行動をしないと好感を持たれない。時に嫌悪や非難の対象にすらなる。

 たとえば、社員食堂の食事だとか、出張旅費の計算方法とか、会社が開く各種宴会やパーティーなどの内容とか、「人」に関する部分でお金をケチると「こんな大手の企業なのに、これほど節約しているのか。立派な会社だ」という人はいない。経済力に見合った「相応の支出」をすべしとの概念が存在している。