以前、「中古マンション時価データ、無料公開の衝撃」(こちら)という記事が日経ビジネスオンラインに掲載された。これは弊社が運用する住まいサーフィンの「自宅査定」機能の話だったが、反響は凄かった。これは、不動産価格の不透明さの証明でもある。

中古マンションが「10%高く売り出される」背景

 中古マンションの売出価格は、実際に成約する価格より高く設定されていると考えて間違いない。買い手もそれを前提に、広告上の売出価格より低い価格で指値を入れて購入意思を示すのが一般的だ。ここで、いくらで買い付けを入れるべきかは悩ましい問題だ。安すぎては買えないし、高すぎては損をする。相手が売る気になるぎりぎりの値段を付けたいところである。

 こんな買い手の悩みに瞬時に応えてくれるツールがあれば、中古物件の取引が活性化するかもしれない。そこで住まいサーフィンでは、物件検索サイトで広告が出されている物件の想定成約価格を、数秒で割り出す機能をつくってみた。LINEでのやり取りで即時返答するので、「LINE判定」と呼んでいる。かなり画期的だと思う。

 売り手は、仲介業者から想定成約価格を聞き、販売戦略を一緒に決める。その思惑はどのようなものか。代表的な例を多い順に挙げると、こんな感じである。

  • 「過去の成約事例を見ると、○○万円になりそうだが、それよりも10%高い価格で売り出して、○○万円までの指値には応じよう」
  • 「過去の最高単価と同じ価格で売り出して、様子を見ながら下げてみよう」
  • 「1か月後までに現金化したいので、少し安く設定して決済の早い人を優先したい」

 こうした思惑を総合すると、売出価格と成約価格の差は約10%になる。これは、業者間の情報を整理した統計でも同じ結果になる。ちなみに、「売る」と決めた段階で、売り手の関心は、正直、売却価格のみとなっている。

●売出価格と想定成約価格との乖離率の分布
●売出価格と想定成約価格との乖離率の分布
(出典)住まいサーフィン
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 売り出された価格は上のように左右対称に分布する。この売り出し分布の中心は成約ベースで査定された価格(縦線)と比較すると平均10%割高の方向に位置している。想定成約価格と比較すると、割高な売出価格は全体の85%を占め、割安は残りの15%に過ぎない。

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