この連載は、村上春樹さんの『騎士団長殺し』に刺激を受けた筆者が、まじめにイノベーションについて語ろうという企画である。村上春樹さんの意図はともかくとして、この小説には創造的な経営やイノベーションにとって大切なことがたくさん書かれている。『騎士団長殺し』に出てくるキーワードや暗示が、ほぼ同時期に筆者が出版した『模倣の経営学 実践プログラム版』と似ているのである。

村上春樹さんの小説『騎士団長殺し』には創造的な経営やイノベーションにとって大切なことがたくさん書かれていて、筆者がほぼ同時期に出版した『模倣の経営学 実践プログラム版』と内容で共通する部分がある。

イノベーションにとって大切なことが書かれている

 村上春樹さんの最新作『騎士団長殺し』、言わずと知れたベストセラー小説である。村上さんは私が勤務する早稲田大学の卒業生で、私の息子たちも大ファンである。次男がちょうど「村上春樹の生い立ち」をレポートにまとめていた。普段はあまり小説を読む余裕がない私もさすがに気になった。

 タイトルを見ると、第1部が「顕(あらわ)れるイデア編」、そして第2部が「遷(うつ)ろうメタファー編」と書かれている。イデアといえば「ものごとの原型」、メタファーといえば「創造のための隠喩」である。

 これらは、まさに私の研究のキーワードである。そして、つい最近に校了した『模倣の経営学 実践プログラム版』において、イノベーションの方法に関連して書き綴ったことでもある。

 「この小説には一体どんなことが書かれているのだろうか」。

 早速アマゾンで購入して読んでみた。そして驚いた。村上春樹さんの意図はともかくとして、創造的な経営やイノベーションにとってとても大切なことが書かれているのだ。文芸的な言い回しではあるがそう感じられる。

 この小説の主人公は腕の立つ肖像画家である。そして肖像画を超えた作品を創るようになるが、彼の創作の方法が参考になる。イノベーションを引き起こす作法と通ずるのだ。小説のネタバレにならないように気をつけながら紹介したい。