ロバート・ラヴェット氏(左)、ケネディ大統領 写真:Stan Wayman/Getty Images

(前回から読む

清野:北朝鮮クライシスを前に、日本と米国の関係、直近の現代史を、いろいろうかがっています。

手嶋:発見はありましたか。

清野:ありすぎるほど、あります。今、自分が生きている平和は、米国政府の世界政策と、その中で運用される対日ポリシーの下にある、という冷厳さに向き合って、背筋が寒くなっています。

 ただ、それが当たり前すぎるくらい当たり前で、変わるということさえ考えられない経済成長期に生まれ育った私は、お花畑モードからなかなか抜け出せません。日本は米国から大事にされているはずだよね、最後は米国に頼れるはずだよねと、そこで考えは止まっていました。いえ、より正確に言うと、考えたくなかったんです。

手嶋:戦後の日本は、安全保障のリアリティに身を置いたことは絶えてありませんでしたから。

清野:平和憲法によって軍事力を保持せず、というところは大賛成だけれども、自国の安全は結局、米国次第。考えてしまいますねえ。

手嶋:私が身を置くメディアの事情でいえば、現実の戦争を進める政治の中枢で取材した経験も欠けていましたしね。

清野:そうなりますよね。

手嶋:メディアの報道は、表で起きている事象を追いかける表層的なもの、つまりインフォメーションを報道しているにすぎませんでした。

清野:手嶋さんの常々いわれる「知性によって彫琢されたインテリジェンス」ではない。

手嶋:インフォメーションをもっぱら受け取りながら、より深く本質的なインテリジェンスを求めることは、八百屋さんに肉を買いにいくようなものです。

清野:要は「インフォメーション」と「インテリジェンス」は違う、ということですね。米国のメディアは、その点では経験を十分に積んでいるのですか?

常に戦争の現場にいた米国メディア

手嶋:そりゃあ、そうです。戦後の米国は、冷戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争、IS戦争と数限りない戦争を常にしていたのですから。今だって、究極の安全保障のリアリティたる戦争に常に身を置いています。

手嶋 龍一(てしま・りゅういち)
NHKの政治部記者として首相官邸、外務省、自民党を担当。ワシントン特派員となり、冷戦の終焉、湾岸戦争を取材。ハーバード大学CFIA・国際問題研究所に招聘された後、ドイツのボン支局長を経て、ワシントン支局長を8年間務める。2001年9.11の同時多発テロ事件では11日間の昼夜連続の中継放送を担った。2005年NHKから独立し、日本で初めてのインテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』(新潮社)を発表。姉妹篇『スギハラ・ダラー』と合わせ50万部のベストセラーに。近著に『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師-インテリジェンス畸人伝』(マガジンハウス)。最新刊は、主要国が少数の政治指導者に強大な決定権を委ねる危うさを警告した『独裁の宴-世界の歪みを読み解く』(中公新書ラクレ・佐藤優氏と共著)。現在は、大学や外交研究機関で外交・安全保障を中心に後進の指導に取り組む。

清野:その事実を差し出されると、重い気持ちになります。米国のメディアは常に「従軍記者」だったわけですね。

手嶋:「ホワイトハウスの従軍」の経験から得られる知見はまた圧倒的です。その意味で、北朝鮮クライシスを語る時に、はずせないことが1962年10月に起きたキューバ・核ミサイル危機です。

清野:は? 現代の北朝鮮と、キューバ危機になにか関係が?