手嶋:国務省の説明は「北が悔い改めた」というものでしたから、メディアはそれを信じてしまったのです。意外と単純なのですよ。

清野:困りますねえ。

手嶋:さて、実に紛らわしいのですが、米国の安全保障・外交のプレーヤーには、もう一人のライス女史がいるのです。それも黒人女性の大変な才女で、似たような経歴を経て、国家安全保障担当の大統領補佐官という最高位のポストを射止めています。オバマ政権で活躍したスーザン・ライスがそのひとです。

スーザン・ライス氏 写真:AFP/アフロ

清野:共和党のブッシュ(子)政権と、民主党のオバマ政権で、米国の安全保障政策の枢要なポストを担ったコンドリーザとスーザン。確かにどちらも姓が「ライス」なので、ごっちゃになってしまいます。

手嶋:ちなみに二人には縁戚関係はありません。偶然、姓が同じだっただけです。

 奇しくも、同じ姓を持つ二人の秀才の黒人女性が、安全保障を担うポストに就いた。さらに、「二人のライス」は、取り返しのつかない判断ミスを犯して、現在の北朝鮮情勢にも少なからぬ影響を与えた点でも、似たもの同士です。

清野:こちらのスーザン・ライスは、民主党のリベラルと思いきや、北朝鮮の核容認論者としても浮上していますね。

極めつきの才媛が犯した致命的なミス

手嶋:オバマ政権のスーザン・ライスは、スタンフォード大学で歴史学を収めた後、エスタブリッシュメントへの登竜門、ローズ奨学生に選ばれ、オックスフォード大学で修士号を取り、さらに居残って、アフリカ情勢を研究して博士号を取得しています。

清野:極めつきの秀才だったわけだ。

手嶋:クリントン民主党政権でホワイトハウス入りを果たしたのが29歳の時。国家安全保障会議でPKO(平和維持活動)を統括する部長を経て、アフリカ担当の大統領特別補佐官となり、これまたアフリカ担当の国務次官補、日本の外務省でいえばシニアな局長級のポストを手に入れました。目覚ましい出世です。

清野:目がくらみますねえ。それに随分と若くして、出世の階段を上っている。日本ではちょっと考えられませんね。

手嶋:どの国でも同じですが、引きあげてくれた人がいたのです。彼女は、クリントン政権で国務長官を務めたマデレーン・オルブライト女史の秘蔵っ子だったんです。クリントン選対の選挙運動でも政策作りにちゃんと関わっていましたので、一種の論功行賞です。

 ところが、好事魔多し。意外な落とし穴が彼女の前途に待ち構えていました。9.11同時多発テロ事件が起きるはるか以前のことです。スーザン・ライスにとって生涯の傷となる大きなミスを、彼女は犯してしまったのです。

清野:生涯の傷。

手嶋:当時、アフリカのスーダンに独立王国のような勢力を築いていた男がいました。それが、サウジ育ちの大富豪オサマ・ビンラディンでした。