手嶋:オバマ政権の「戦略的忍耐」は、極めて悪評ですが、ブッシュ(子)政権が犯した失策も見逃すことはできません。その点でも、外交・安全保障の要にいたライス女史の責任は重いですね。北朝鮮をあろうことか「テロ支援国家」のリストから外してしまったのもブッシュ政権です。

清野:米国国務省は昨年11月、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定しました。そのニュースを聞いた時、それまで「テロ支援国家」指定は解除されていたんだ、と、逆に驚いてしまいました。指定解除から再指定まで、実に「空白の10年」が生じてしまったわけですね。

手嶋:北朝鮮の核・ミサイル開発を話し合う外交の枠組みが「六カ国協議」。北朝鮮のほかには、米国、日本、韓国、中国、ロシアがメンバーです。2008年当時、六カ国協議の代表を務めていたのが、国務次官補だったクリストファー・ヒル。彼はコンドリーザ・ライスの意を受け、指定解除に踏み切る誤りを犯した張本人です。

清野:なんでそんなことが起こるのでしょうか。

手嶋:当時の米国は、イラク戦争の後始末に追われていましたから、朝鮮半島問題など二の次でした。そんな政権内部や議会の空気をヒル次官補は忖度して、北の核・ミサイル問題をお手軽に処理しようとしたのでしょう。

清野:出た、忖度。

手嶋:それが逆に北の独裁者に付け込まれることになりました。ヒル次官補は、その北朝鮮寄り姿勢から「キム・ジョンヒル」とメディアから揶揄されていました。それにしても、これほどの愚行は、冷戦後の世界史でも、ちょっと見当たりません。

もう一人の“ライス”、北の核容認論者

清野:その「キム・ジョンヒル」の判断の誤りは、コンドリーザ・ライスにもあるということですか。コンドリーザは結局、のちに国務長官となるわけですが。

手嶋:そうですね、コンドドリーザ・ライスの判断がちゃんとしていれば、「テロ支援国家」の解除など、起こるはずはありません。解除の間、北朝鮮はレバノンのテロ組織、ヒズボラに武器を提供し、イランとミサイルの共同開発を行い、テロを支援するだけでなく、昨年はついに指導者が、自らの血を分けた兄を公然と暗殺した。これのどこが「テロ支援国家」ではないのか。

清野:テロ国家そのものですね。ただ、2008年の北朝鮮テロ支援国家解除について、正直に言いますと、それ、私はあまり覚えていないのです。というか、意識もしていなかった。

手嶋:新聞やニュースには、接していたのでしょうから、日本のメディアの報道が的を射ていなかったのでしょうね。

清野:ワシントンのメディアの反応はどうでしたか?

手嶋:日本よりももっとひどかったと思いますね。型通りの報道、つまり、テロ国家の認定を解除したという事実は報じていますが、これがどれほど重大な誤りなのかというトーンではありませんでした。

清野:あら。