手嶋:その数日前に、ブッシュ大統領はBBCのインタビューを受けたのですが、意地の悪い質問にご立腹でした。BBCのインタビュアーは、見識のあるところを視聴者にアピールする気持ちもあって、得意の二重否定の語法でブッシュを攻め立てていたのです。それに比べて、私の質問は、聞きたい内容を引き出せればいいのですからストレート。ブッシュ大統領は「あなたの英語は実に分かりやすい」といってくれました。そりゃそうです(笑)。

清野:いいやつじゃないですか。

手嶋:インタビューそのものは、朝鮮半島有事と台湾海峡有事にも触れる硬派のものでした。ブッシュ大統領は、インタビューが終わるとコンドリーザ・ライス補佐官を傍に呼び、「RYUICHIの取材の電話には出て、協力してやってくれ」とまで言ってくれました。

清野:そうやってインテリジェンス網が補強されていくんですね。

手嶋:インタビューの時点で、私のデータはすべて先方にインプットされており、「味方として取り込んでおいたほうが得だ」と判断したのでしょう。政治家に単なるいい人などいませんから。

清野:実は私はトランプにインタビューしたことがあるのですが、いい人でした(笑)。

手嶋:それはいつのことですか。

清野:1989年に、ニューヨークのトランプタワーを訪ねました。風雲児として米国の不動産業界でのしあがり、最初のピークを迎えていた時です。そのころから、「将来は大統領に」という話は出ていました。

手嶋:共和党の政治家は、日本のメディアでは、権力を振りかざし、腹黒く――といったステレオタイプのものが多いのですが、むしろ民主党の政治家より、義理堅くて、約束をきちんと守る人が多いのも事実です。

テロ支援国家指定を解除したコンドリーザ・ライス

清野:ブッシュ(子)政権の国家安全保障担当大統領補佐官だったコンドリーザ・ライスについても、ぜひおうかがいしたいのですが。ブッシュ政権時の安全保障戦略の要を担っていた彼女を、手嶋さんはどう評価していますか。

手嶋:彼女は若くして飛び級を重ねて、博士号を取得した秀才の黒人女性です。ロシア問題のスペシャリストとしてパパ・ブッシュに見いだされ、政権入りの直前はスタンフォード大学の教授でした。

 ただ、切れ者ではあるのですが、ホワイトハウスという巨大な官僚組織を動かし、大統領に代わって泥をかぶるというタイプのプレーヤーじゃない。国家に尽くす器には、欠けるところがありましたね。パパ・ブッシュに仕えた国家安全保障担当補佐官、ブレント・スコウクロフト将軍のような真の公人とはいいかねます。

清野:コンドリーザ・ライスの世評は、若干「盛られている」ということですか。

手嶋:黒人女性の国際政治学者にして、スタンフォード大学から鳴り物入りで政権に迎えられたのですが、結局、彼女は「ライス外交」と呼ばれるような実績を残すことはできませんでした。