手嶋:ネオコンの定義は三つです。第一は、極左から極右に回帰した人々。第二は、力の信奉者ということ。第三は、その多くがユダヤ人であること。同時に、彼らは民主主義の信奉者でもあり、使命感も旺盛です。その結果、強大な軍事力を背景にしながら、米国流の民主主義を中東地域にも押し広げていく、という使命感に駆られていきます。

清野:この1月にトランプ大統領が、エルサレムをイスラエルの正式な首都にして、米国大使館をテルアビブから移転する、と表明して世界に激震を引き起こしています。なぜ、とりわけ中東地域なのでしょうか。

手嶋:そこに、このイスラエル・ファクターが絡んでいます。「我が祖国、米国の安全保障」という時、常のアメリカ人なら、その対象は額面通り「米国の国土」です。しかし、ネオコンの論客たちには、イスラエルの安全保障が、ぴたりとそれに重なってくるのです。

清野:うわあ、生々しい……。

手嶋:苛烈な中東情勢の中で、イスラム諸国の海に浮かぶ孤島、イスラエルの安全保障を考えてみてください。米国の力を背景にイラクなどが民主化されれば、彼らのもう一つの祖国、イスラエルの安全保障環境は格段に良くなります。ですから、持てるすべての力を注いで中東での戦争に突き進んでいったのです。

「北」はインテリジェンスに生き残りを賭けている

清野:中東か、東アジアかということになると、これはもう最優先で中東に力を入れる、ということになるわけですね。

手嶋:その結果、東アジアには巨大な軍事的空白ができてしまった。ただし、我々日本人は、巨大な戦略的空白が生じていたことについて、実に鈍感だったのです。

清野:その間、私たちは「失われた10年だ」いや「失われた20年だ」と、経済の側面だけを内向きに見ていたと思います。

手嶋:一方で、米国から圧力をかけられる側、つまり金正日、金正恩にとっては、米国の対外的な軍事ポリシーについて、とりわけ鋭敏にならざるを得ない。彼らは、米国の抑止力が緩んでいることを見逃さなかったのです。米国の巨大な戦力がのしかかってこないのですから、安んじて、核・ミサイルの開発に手を染めたのでした。

清野:独裁者の側に視点を置くのは抵抗がありますが、そういうことですよね。

手嶋:自分たちの体制保全がかかっているのですから、国際政局の見極めについては、北の独裁者は、我々よりはるかに敏感ですよ。これはみなさん、なかなか認めたくないことかもしれませんが、実は北朝鮮は、インテリジェンス能力は非常に高い、といっていいのです。

(⇒第3回に続きます。)