実際に、女性が結婚相手の男性に求める年収で400万円以上と答える割合は20代で61.7%、30代で65.8%になる[8]。一方で、25歳から29歳男性の最頻値を中心とした50%の収入は290万円~350万円であり、30歳から34歳は平均こそ438万円となるが400万円以下で区切ると63%から69%程度になる[10][11][12]。つまり、男性の所得は20代では極端に大きな差はつかないものの、学歴、正規雇用、都市部か地方かなどによって大きな差がつき始めるのが30代ということになる。そして、ここで年収が一定のラインに満たない30代は、結果として結婚願望はあったとしても求婚女性の求めるハードルをクリアできず、結婚や交際には至らない。

 一方で、経済状態が改善に向かう男性は結婚意欲に良い変化をもたらす。生活の安定や収入の増加が具体的にみられる非正規雇用から正規雇用への進展が実現すると、おおむね5割程度であった結婚意欲が80%弱にまで向上することが分かっている[13][14]。実際に、追跡調査において年収の増加が見込める環境の変化が男性の結婚意欲に大きな影響を与えることは、結婚相談所など民間サービスにおいても著明な事実として把握されており、実際に転職後に結婚サービスを申し込み、交際相手を見つけて結婚に漕ぎ着けるケースは少なくない割合存在するとみられる。正社員になれたので、結婚にも前向きになるという男性像は年齢を問わず普遍的にみられる現象だ。

20代前半女性は共働き志向が強まるが…

 逆に、離婚理由の上位には毎年必ず夫の失職などの経済事情が入っており、結婚生活における経済の安定は重要な要件となっていることが理解できよう。当たり前のことだが、夫婦間の情愛と経済状況については常にリンクしており、現代社会においてはそのような諸条件をクリアして初めて子供を夫婦間で儲ける、子供を2人ではなく3人養うといった要因になる。そうなると、現代社会においては女性が男性に高い年収を求めることが一般的であり続ける限り、ある程度年を経た男性が厳しい雇用状況に直面すると、これらの低所得の30代以上男性層はごっそり結婚の検討相手から外れることになってしまうことになる。30代中盤までで有利な経済基盤を築ける転職ができる男性は一握りで、年収600万円以上の20代30代男性は5%程度であることを考えると年収以外の何かで女性が妥協できなければ結婚できないのが日本社会の状況になっていると言えるだろう。

 昨今の20代男女の結婚事情でみると、20代後半女性が10年以上前からずっと男性に対し厳しい年収ハードルを掲げ続けているのに対し、最近の20代前半女性は共働き志向が強まり、夫婦が一体となって家庭を築き子育てに励もうとする意識の変化も垣間見える。結婚した後も仕事を続けると回答する独身女性は2002年から2012年にかけて41.8%から44.6%へ増、また出産した後も仕事を続けると回答する独身女性も51.3%から65.1%に増えたのに対し、出産後は仕事をやめると回答した独身女性は24.5%から6.9%に減少している[14]。実際に、出産前有職であった第一子出産女性が出産後も働く割合は、2001年出産の32.2%から2010年出産の45.8%と13ポイントも跳ね上がっている[15]。結婚願望の強い男女において、結婚の障害となっている経済事情を解決するために、共働きを積極的に選択し、出産後も両親で働きに出る社会環境が結婚を後押しする可能性は存在する。ただ、これらの積極的共働き派は、社会環境、とりわけ都市部の待機児童問題や貧困問題と密接に関係すると同時に、所得は低いけれどどうしてもこの人と結婚したいという20代前半特有の行動様式によるものであって、残念ながら30代男女の結婚願望に対する救済にはなかなかならないのが現状でもある。経済的に厳しいのは承知で結婚する、夫婦共働きは当たり前という社会環境を実現するためには、女性が求める結婚相手像の希望年収を大きく引き下げてでも結婚してこの人と暮らしたいという志向を、社会が前向きに受け止める必要がある。