転勤先の職場に馴染めない。モヤモヤの原因は…

 それでは“ずるゆるマスター”の事例をみてみましょう。

 中堅人材会社のコンサルティング部の課長補佐のSさん。部内の皆から人気の“ずるゆるマスター”の部長Oさんの部下でもあります。SさんはいつもOさんのことを尊敬しており、Oさんに教わったことはなんでも実行しようと心に決めているひとりです。

 入社以来ずっと地方勤務が長かったSさんですが、2年前の人事異動で念願の東京本社への異動となり、張り切って仕事に取り組んでいるものの、なかなか馴染めず、先行きに不安を募らせる毎日を過ごしています。仕事ではしっかりと成果を出しているつもりです。ですが、将来もずっとこの会社にいて自分は幸せなのだろうか、と感じさせる場面に出くわすのです。

 例えば先日の会社の大学同門会にSさんは呼ばれませんでした。朝夜の通勤時や昼休み、帰宅後のちょっとした時間に見るSNSで同門会が開催されるのは知っていましたが、待てども暮らせども、Sさんにはお誘いの声がかかりませんでした。ひょっとしたら当日に誘われるのかも、という淡い期待も裏切られました。

 比較的仲良しと思っていた同期も転職し、その次の勤め先で楽しそうにしているのもSNSを見て知っています。嫌な気分になるのはわかっているのにSNSを見てしまう自分に嫌気がさすと同時に、見ずにはいられない今の環境を仕方ない、と諦める気持ちもあります。クライアントさんからSNS経由で連絡があることも多いからです。

 転勤してきて1年経ったころは、馴染めないならそれはそれで、仕事で一旗あげて出世にまい進しようと考えていました。そこで、部内のあらゆる部会やプロジェクトチームに立候補し、高校大学と陸上で鍛えた体力を生かし、バリバリとそれらすべてをこなしてきました。しかし、ボーナス査定でなんとなく自分の評価が思っているほどでもない、ということに気付かされます。

 仕事ではそれなりに成果が出ている。部内活動にもしっかりと積極的に参加している。そうだ、朝礼当番や社内コンクールにも毎回参加している。考えれば考えるほど、このままでいいのだろうかという気持ちがドンドン強くなっていきます。

 昨日の忘年会の二次会も誘われなかった。それに引き換え、あまりパッとしない2つ年下のE君はいつもみんなから人気があり、なんとなく自分よりも先に課長になりそうな雰囲気があります。E君はクライアントさんの就職斡旋数がSさんよりも少ないのは業績表を見れば明らか、部内活動もたまに顔を出すくらい。社内コンクールには参加したことはなし。直接本人と話をしてみよう。

消極的な後輩の人気ぶりが解せない

 「E君、お疲れ様。たまには一杯どうだい?」

 「Sさん、はい、大丈夫です。私は仕事が早い方ではないので、20時くらいでよろしいでしょうか?」

 「そんなに遅くなるクライアント数じゃないでしょ」という言葉を飲み込みました。

 「お疲れ様、では乾杯」と言ったものの、何を言えばいいのだろう? 2、3杯ビールを飲むとSさんは意を決して単刀直入に聞くことにしました。

 「E君、部内活動とかあまり積極的にしないのはどうして?」

 「すみません、私は仕事を早く片付ける自信がありませんので、部内活動で周りの皆さんにご迷惑をおかけするのが怖いと思いまして」

 「プロジェクトチームも立候補しないよね? 僕よりも年上の人もたくさん立候補されるけど、しっかりとアピールできれば僕のように選ばれるよ」

 「年上の方もいる中でSさんが選ばれるのは実力があるからですよ。業績も素晴らしいですし、僕なんかは年上の人がいる中、とてもじゃないです」

 「社内コンクールも応募者が少ないから入賞のチャンスがたくさんあるのに」

 「社内コンクールは、入社2、3年目の人たちがたくさん応募しますので」

 「だから、入賞が簡単なんじゃないのかな、チャンスだよ」

 やっぱり彼はパッとしない。意欲も全然感じられない。そもそもアピールする気がないのじゃないのかな。こんなことに時間を使っていても仕方ないと思ったSさんは早々にEさんとの会食を終えました。