人を立たせているように見せかけて、実は自分のことを考えているなんてズルい、と感じた方もいらっしゃるかもしれません。そう感じた方は正解です。中国人社会では「ズルい」=「賢い」、「賢い」=「ズルい」と表現されることが多くあります。中国人が身近な存在になった日本で「あなたはいい人ですね」と華僑や在日中国人に言われて喜んではいけません。「あなたはお人好しですね」と皮肉られていると思って自戒するのがベターでしょう。

 ビジネス社会において、「私が私が」と自己アピールするよりも、自分としっかりと向き合い、ライバルや状況判断をしっかりとした方が得策だということはここまでお読みいただいた読者の方にはご理解いただけたと思います。

人を蹴落とさずに自分が選ばれる方法

 そもそも受けている教育が違う、と書きましたが、華僑はどのような教育を受けているのでしょうか?あなたもご存知の『孫子』の謀攻篇「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ではありませんが、一つご紹介させていただきます。

 子供から「学級委員になりたい」と相談されたときに日本の親御さんの多くは「人から推薦されるようにしっかりと学問に勤しみ、たくさんのお友達と仲良くし、生活態度で先生に褒められるようにしなさい」とアドバイスするのではないでしょうか? 華僑たちの家庭ではもっと単純明快です。「自分よりも劣っていると思う人を推薦しなさい」です。

 説明いたします。自分よりも評価が低いクラスメイトの良いところ(性格面など)を持ち上げて推薦することによって、推薦された人は嬉しいながらも恐縮します。恐縮して「自分よりも彼の方が優秀です」と逆指名してくれます。周りで見ている人たちも「確かに、推薦されたA君よりも、推薦したB君のほうが学級委員に向いているよね」となります。立候補して「私が私が」と自己アピールしていないにも関わらず、全体からみると二択に持ち込むのに成功しています。しかもその二択の優劣は始めからわかっているのです。

 これを「ズルい」と思うか、「なるほど」と膝をうつかは意見がわかれるところでしょう。ですが、華僑たちはそのような術を使って、ビジネス現場でも次々にいいポジションに就いていくのです。指をくわえてそれを見ているだけなのは得策ではありません。このような術は様々なところで使われているのが現実なのです。現実を受け止め、自分としっかりと向き合った人がビジネスにおいてもプライベートにおいても欲しい結果を手にしているのは、厳然とした事実です。

 それを受け入れた後にどうすればいいのでしょうか? 日本の上方いろはかるたの文言にもなっているように「論語読みの論語知らず」にならないように気をつけることですね。「論語読みの論語知らず」とは、表面上の言葉の意味は理解できており、それを諳んじてみたり話すことはできても、実際に使うことができないという皮肉を含んだ言葉として使われています。

疎遠になっても、人の悪口は絶対に言わない

 では何から始めたらいいのかと迷う方もいらっしゃるかもしれません。もし、何から始めていいのか迷ったら「人の悪口を言わない」ということからスタートです。どんなことがあっても関わりのある人の悪口を言ってはいけません。司馬遷によって編纂された『史記』にも次のような言葉があります。「交わり絶つも悪声を出さず」。

 ここまでお読みいただいた方は、戦争を繰り返してきた中華系人が人をなかなか信用しないのはご理解いただけたと思います。なかなか人を信用しない華人たちですが、一度信用したら絶対です。ご縁があった人が悪者で、縁が途絶えたとしてもその人を悪く言うことはありません。なぜか? その答えは簡単です。その人と少しでも付き合ったりご縁があった自分の悪口を言っているようなものだからです。そのようなことをするだけで、間違った判断をする人、他責の人と思われても仕方ありません。人の悪口を一切言わない、と決めるだけで景色が変わることを実感いただけるはずです。