「人の秘密や悪口」の取扱いは慎重に

 最後に、③悪い話を聞いてしまった場合ですが、これの対策が最も大切です。悪い話の中には、人の悪口や噂話が該当するでしょうし、機密情報に触れるようなことも当てはまるでしょう。人の悪口や噂話は相槌を打ち過ぎると同調している、場合によっては一緒になってそれらを喧伝していることにもなりかねませんので、それは封印しなければなりません。「それは私が聞いてはいけない話でしたね」「私の質問が悪かったです、では別の違う角度からお聞きしてもいいですか」と話を変えていくのが処世術です。ネガティブな内容でも情報収集という目的は達せますが、その目的を達成すれば同類にならないように逃げる準備をしておくのも華僑流です。

 機密情報などを聞いてしまった場合は、後々、責任問題などで自分にも禍が降りかかってくる可能性がありますので、相手に話した内容を忘れてもらう必要があります。人は繰り返しによって記憶を強化しますので、その特性を利用します。機密以外の話に戻り、もしくはそれらの質問を投げかけ、繰り返し「それはこういう理解でよろしいですか?」「再度確認したいのですが、こういうことでしょうか?」と機密情報とは関係のない話を何度も繰り返していきます。何度も何度も繰り返すうちに、意図せず相手が話してしまったことを記憶の中で小さなことにしてしまうのですね。

 重要なので再度お伝えしますが、特に上司や年上の人の機密情報などはしっかりと知らないことにしておかないと、後で取り返しのつかないことになりますので、とても注意が必要です。それについては韓非子が次のような言葉を残しています。「事以密成、語以泄敗(事は密なりを以って成り、語は泄るるを以って敗れる)」。秘め事は極秘裡に進めることによってそれが成功し、それが口づてに外部に漏れてしまえば失敗してしまう、という意味です。この言葉通りに考えれば、機密情報が口づてに漏れた時点でうまくいかない可能性が高いので、自分の身を守るためにも聞かなかったことにするのが賢明です。上の立場の人の弱みや情報を握ったぞ、と調子に乗るのは論外であり、機密情報を知っていると知られたが最後、上の立場の人の権限によってどうとでもされてしまう、ということを覚えておきましょう。

異動に次いで海外転勤! 突然の辞令の原因は?

 それでは“ずるゆるマスター”の事例をみてみましょう。

 中堅人材会社の営業2課の課長補佐のTさん。最近営業4課から異動になりました。異動の名目は営業2課の業績アップです。そのTさんは、部内の皆から人気の“ずるゆるマスター”の営業部長Kさんの部下でもあり、Kさんに教わったことはなんでも実行しようと心に決めている1人です。

 Tさんは弁舌さわやかで、ここぞという時の押しも強く、また扱う金額も大きいので、どちらかというと攻めの部署である営業4課のエースであり、営業4課の課長になると噂されるほどの実績を出していました。それが突然の辞令で営業2課へと異動してきました。営業2課は、どちらかというと既存客のご要望を聞くのに一番時間を割かないといけない部署です。

 相手の話している内容の飲み込みが早く、適時的確な提案が得意と自他共に認められてきたTさんには少々窮屈な環境です。同期で一番乗りで課長になるためにも、Tさんは2課の仕事にまい進しようと日々頑張っています。本当は好きではない年下の部下にも頭を下げ、2課のお客様の情報を徹底的に頭に入れ、それらを分析し、「よし、これから2課でもバッチリと業績を出せる」と確信が持て始めたその時に、事件は起きました。

 またしてもTさんへの異動辞令です。しかも、会社として一度は進出に失敗したシンガポールへの海外赴任です。「何かがおかしい。これは何か意図された異動だ。もしかして、リストラか? いやそんなことはない、僕は入社以来ずっといい成績を残してきた。わからない。そうだ、役員候補の呼び声が高いK部長に相談してみよう」