「リーダーシップですか。なんだか懐かしい響きですね。インターネットの普及で組織はフラット化して、リーダーとはなんなのかがわかりにくくなっているように感じます」

 「そうだね、リーダー不在の組織が多くなっている。コンピューターの特徴として同時並列的に処理ができるというものがあるけど、組織がフラット化してリーダーが必要ないというのは違う気がするよ。同時並列的に物事を処理する時代だからこそ、リーダーが必要。同時に違う楽器を演奏するオーケストラに指揮者が絶対に必要なように」

 「人手不足が続いておりますので、使えない人の採用が増えて困りものです。手を動かさず、口ばかり動かしている人間が増えました。これは話すだけという意味ではなく、メールなどもそうです、実行力に乏しいといいましょうか」

 「指揮者は一つや二つの楽器の奏者が下手だからといって演奏を投げ出すかい?」

 「いえ、そんなことはありません」

 「でしょ。使えないと多くの人が思う人材を使えるから立派なリーダーになれるんだよ。調和が大切」

 「私はどうすればいいのでしょうか?」

 「まず第一に、一つの軸を立て、それを守り抜く。第二に、できない人も有効に使えるか?」

 「思い出しました。礼記の『天に二日無し、土に二王なし』と、韓非子の『下君は己の能を尽くし、上君は人の智を尽くす』ですね」

 「よく思い出してくれたね」

 「初志貫徹のための朝令暮改は悪いことではない、口だけの人間には決まったルーチンだけ指示してそれを守らせることによってチームの勢いが増す、でした」

 「そう。リーダーとなる君がそれを実践できたら、AIも単価の安い外国人労働者の人たちも怖くないよ。ずっと会社や社会から重宝されるから、将来不安なんてどこ吹く風になるよ」

 「なんだか、スッキリしました。ありがとうございます」

 次の日、ハツラツとした顔でチームメンバーに業務について一生懸命話しているXさんの姿がありました。あれ以来、Xさんはため息をつくことがなくなりました。

 豪腕とは程遠いのに常にリーダーのポジションに就くあの人は、朝令暮改しても周りを混乱させず、できないという評価の人もうまく動かす“ずるゆるマスター”かもしれません。

 拙著『華僑の大富豪に学ぶ ずるゆる最強の仕事術』では、中国古典の教えをずるく、ゆるく活用している華僑の仕事術を「生産性」「やり抜く力」「出世」「マネジメント」「交渉術」の5章立てで詳しく解説しています。当コラムとあわせてぜひお読みください。

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