「自分頼み」からの脱却もリーダーには欠かせない

 祖国を出てゼロどころかマイナスからスタートする華僑が短期間でお金持ちになれる理由の一つに「自分ができる必要はない」という思考があります。次の言葉が参考になるでしょう。 

「下君は己の能を尽くし、上君は人の智を尽くす」

 『韓非子』にある言葉です。意味としては、リーダーたる者は、仲間の能力を最大限発揮できるような環境を作り、人の知恵を大いに使わせてもらい、全てを融合させてどんどん可能性を広げていく、でいいでしょう。

 自分の能力のみに頼らず、できる人の能力を活かせるか? さらに、できない人も有効に使えるか? これがリーダーとしての第二の条件です。

 できる人だけの組織など世の中にほんの一握りでしょう。有名企業や大企業でも「できると思って採用したもののできなかった」という想定外をゼロにすることは困難です。できる人を使うだけのリーダーより、できない人も持て余すことなくリソースとして上手く使えるリーダーの方が優秀であることは間違いありません。「できない部下ばかりで」「無能な上司で」と言っている人で、有能な人はいません。

口だけ達者で行動が伴わない、そんな人をどう生かすか

 人を使う上でも、リーダーの役割はビシッと決めることです。そこで華僑たちが基本中の基本としているのが、「疑わば用うる勿れ、用いては疑う勿れ」(韓非子)です。

 前半部分の「疑わば用うる勿れ=疑わしい相手は初めから使うな」というのが本来の意味ですが、華僑的リーダーは「口ほどにもない人にも使い道はある」と解釈します。

 例えば「自分はこんなことを知っている」「あんなアイデアがある」など、語るだけ語って、やらない。知識があり、弁も立つが行動が伴わない、いわゆるノウハウコレクタータイプの人がいますが、このようなタイプに「じゃあ、やってみて」と任せても結果は出ません。

 ではどのような使い道があるのでしょうか? 華僑的には「口だけの人にはその口で喋らせておけばいい」となります。その人が集めた情報や考え出した作戦を喋らせる。知恵だけ出させて、実行は行動力のある人に任せればいいのです。

 とはいえ喋らせるだけでは仕事になりません。口だけの人にはルーチンワークとして考えなくてもいい仕事を与えます。「言われたことを言われた通りにして、それ以外のことは絶対にしてはいけない」と。

 口だけで行動が伴わない人は、それを自覚しつつ周囲にバレることを恐れています。ですので、「言われた通り」に動いていることで安心するのです。その上で「言われた通りにできているならば、あなたのアイデアを聞く」とチャンスを示せば、喜んで色んな知識を披露してくれます。

 口だけの人でも「言われた通りに」を続けるだけで、このタイプでも成長し自信をつけるというのは筆者も実証済みです。できないと思われていた人が自信をつけると組織に活気が出ます。短期的判断で見放しては損なのです。

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