部下の心が見えないのはIT時代だから?

 それでは“ずるゆるマスター”の事例を見てみましょう。

 Rさんは困っています。中間管理職になってから4年、現在の仕事はそれなりに辛いこともありますが、やりがいを感じながらやってきたつもりです。

 Rさんを困らせるのは、勢いの留まることを知らないIT化の流れです。Rさんが社会人になったころはパソコンを使うのは一部の人であり、携帯電話も電波が届かない場所がまだまだたくさんあった時代です。

 便利になったのはいいけれども、「それは直接会って話さないといけない案件でしょ」と思われることもデジタルに慣れた部下達からはSNSやメールで報告、連絡が入ります。背景や歴史とは言わないまでも大まかな流れを説明しておかないといけないこともたくさんあります。

 フラット化していく組織の中でRさんは中間管理職として一抹の不安を覚えています。IT化、デジタル化、クラウド化は中間管理職の役割をどんどん奪っていくような気がしてならないのです。

 部下の気持ちがわからない、なのに何かコトが起これば上司である自分の責任になる。考えれば考えるほど、Rさんは居ても立っても居られない気持ちになります。

 「悩んでいても仕方ないT部長に相談しよう」。T部長は中国支店で実績を出し最年少部長に抜擢され、役員間違いなしと噂されている“ずるゆるマスター”です。

上から目線ではなく、一枚上手の対策を

 「という状況でございまして、悩んでおります」

 「正直に話してくれてありがとう。なんとなくの不安を抱えている、という認識でいいかい? いわゆる、部下が何を考えているのかわからない、と」

 「はい、私が上司であるのに、一方的に部下や後輩からSNSやメールが送られてくるような気がしております」

 「一方的に報告や連絡が入ると言ったけれど、R君から部下達に歩み寄るような行動は取っているのかな?」

 「会社方針や部署での業務連絡などは私から指示を出しております」

 「R君は業務連絡だけを部下に対して行なっている。部下はその業務連絡に対しての報告だけをしてくる。フィフティフィフティで何も問題はないんじゃないだろうか?」