「四辞」から部下の潜在的弱点を察知する

 『孟子』に次のような言葉があります、少し長いですがご紹介します。

 「詖辞は其の蔽わるる所を知り、淫辞は其の陥る所を知り、邪辞は其の離るる所を知り、遁辞は其の窮まる所を知る」

 意味としては、「詖辞(ひじ)=偏った話をすれば、何に疎いのかがわかる、淫辞(いんじ)=淫らな話をすれば、何に惑わされているのかがわかる、邪辞(じゃじ)=よこしまな話をすれば、どこで道を踏み外すかがわかる、遁辞(とんじ)=言い逃れすれば、どこで行き詰まっているかがわかる」という解釈でいいでしょう。

 詖辞=偏った話とは、「もし明日、会社が吸収合併されたらどうする?」や「電車が全線止まったらどうやって出勤する?」などです。「吸収合併されたなら……」とスラスラ答えられないようでしたら会社の大局観に疎いことがわかります。「電車が全線止まったなら……」とスラスラ答えられないようなら、リスク管理に疎かったり、責任遂行に疎い可能性があります。

 淫辞=淫らな話とは、「もし接待交際費の上限をなくなったらどうする?」や「お客さんの異性スタッフから言い寄られたら?」などです。「接待交際費の上限がなくなったら……」とスラスラ答えられないようでしたらお金に惑わされるリスクを持っているとわかります。「異性スタッフから言い寄られたら……」とスラスラ答えられないようなら、異性関係で惑わされトラブルを起こす危険性があります。

 邪辞=よこしまな話とは、「お客さんが会社が認めていないキックバックを求めてきたら」や「次のボーナスの一部を私に渡せば昇給、昇格できるけれども」などです。「キックバックを求めてきたら……」とスラスラ答えられないようでしたら強く求められると道を踏み外す可能性があります。「お金を渡せば昇給、昇格できるけれども……」とスラスラ答えられないようでしたら昇給や昇格のためなら道を踏み外してもいい、と考えている可能性があります。

 遁辞=言い逃れする話とは、「チームでやっている例の件だけど君の進捗はどうかな?」や「あの企画は良くないように感じるのだけれど?」などです。「例の件ですが私は……」とスラスラ答えられないようでしたらチームワークに行き詰まっている可能性が読み取れます。「あの企画は……」とスラスラ答えられないようでしたらどのように対処したらいいのか手詰まりで困っていることが読み取れます。

 本来の意味として孟子は発言の際の注意を促しているのですが、人の発言からその人がうまくいかない要素を見つけ出してあげるためにも使える方法、言葉です。うまくいかない要素を見つけ出すことができれば、後の対処は随分と楽になるでしょう。

 上の人が直接的に探るようなことや発言をすると、下の人は警戒したり干渉されていると思ったり、信用されていないと勘違いしてしまいます。そうではなく、たとえ話などをして、さりげなく疎さ、惑い、横道、行き詰まりを察してあげれば、円滑に進むようになり、下に対しての思いやりが伝わるようになります。

 例えば、詖辞=偏った話をして疎いのがわかれば、敏感になるようにそれとなく驚かせるような話をするのもいいでしょう。

 淫辞=淫らな話をして惑わされるのがわかれば、惑わされた結果どのような結末が待っているかを見せたり、想像させるような話をしたりするのがいいでしょう。

 邪辞=よこしまな話をして道を踏み外す可能性がわかれば、それがどんな遠回りをすることになるかを伝えるのもいいでしょう。

 遁辞=言い逃れする話をして行き詰まっているのがわかれば、それとなく答えを教えてあげて安心させてあげるのもいいでしょう。