第4次産業革命に翻弄されるか? 転機とするか?

それでは“ずるゆるマスター”の事例を見てみましょう。
Gさんは困っています。Gさんは営業推進部の中間管理職ですが、人手不足が続きパート・アルバイトの人件費高騰で損益分岐が従来と変わってきており、上司からの利益を出せの号令が怖く感じることがあります。
つい先日も牛丼大手チェーン店が売上高は過去最高水準だったにもかかわらず、人件費の膨張で大きな赤字を出している記事を読んだところです。
悩んでいても仕方ないので、役員間違いなしと噂されているP部長に相談することにしました。
「というわけで非常に困っており、どうしていいのかわからなくなっております」
「正直に話してくれてありがとう。確かに今は景気は悪くないけど、パート・アルバイトさんの時給は想像もつかなかったくらいに高くなってるね。だけどそのお金が景気の維持や底上げにとても役立っている。パート・アルバイトの人は全就業者の2割を占めるからね」
「働き方改革で私たちは残業が減ったので、時給換算ベースでパート・アルバイトさんと私たちの差は、ほとんどないに等しいと感じております。責任は大違いですが」
「はっはは。G君らしくない発言だね。そんなことを感じてしまうG君は今、変わらざるを得ない時期にきているのかもしれない」
「BPO、RPA、AI、IoTなどなど横文字が並び、会社はどんどん自動化や効率化、海外外注化、コンピュータ化の流れでどうしたらいいのか、不安で仕事が手につかないこともあります」
「先進国の多くは移民大国のアメリカを除いて、速度の早い遅いは別としてどこも少子高齢化は大きな問題だね。だから新興国へのBPOはこれからもっと加速するし、人手不足を補うためにもRPAの普及は進む。それが自然の摂理だから、G君自身が変わるしかない」
「変わる、ですか……。ずっと同じように頑張ってきましたので、変わるのは怖い気がします」
「全部を変える必要はない。上司や部下、同僚との付き合いはうまくいっているようだから、変える必要ないよ。G君は人付き合いが上手だよ、それは絶対に変えてはいけない。変えるべきはG君自身がどのようなビジネスパーソン人生を歩んでいくのかという部分だね。第4次産業革命までは会社で通用することを重点的にやっていれば、それで良かったけど、これからはそうじゃない」
「外に目を向けろ、ということでしょうか?」
「外に目を向けることが重要なのではなく、G君自身がどうありたいか、どうすれば自分の人生、ビジネスパーソンとして納得いくかをじっくりと休みの日にでも考えたらどうだい?」
「以前に教わった易経の『窮すれば則ち変ず、変ずれば則ち通ず』ですね。ということは、今の私はチャンスを目の前にしているということですね」
「そういうこと。よく思い出してくれたね」
「ありがとうございます。今週末は、図書館にでも行って、現在の自分の棚卸しをしてみます」
3週間後、溌剌とした顔でデスクに向かっているGさんの姿がありました。どんな出来事が起こってもドンと構えて頼り甲斐のあるあの人は、「窮する→変化する→道が通ずる」をしっかりと理解している“ずるゆるマスター”かもしれません。
拙著『華僑の大富豪に学ぶ ずるゆる最強の仕事術』では、中国古典の教えをずるく、ゆるく活用している華僑の仕事術を「生産性」「やり抜く力」「出世」「マネジメント」「交渉術」の5章立てで詳しく解説しています。当コラムとあわせてぜひお読みください。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
Powered by リゾーム?