中谷:当たり前です。それだけ厳しい世界なんです。

 その点、華僑は、時間も場所も超越して間接的に計算をするでしょう。だから、その時々のポイントで考えるんじゃなくて、どこまで範囲を広げて考えられるか。その範囲の広さがまずけた外れになりますね。時には世代をまたぎますから。例えば、これは孫の代で返してもらうから、ここではどれだけ損をするかとか。

 焦ると、ワンポイント、ワンポイントで得をしようとする。立ち飲みみたいに1杯、1杯で得をしようとしていく。それは小さい利益にしかならないし、長く付き合うことができなくなる。どれだけ損をしていくか。どこまで損を延ばせるかということを考えていく。

大城:損を延ばしても、結局、最後には得をするんですよね。

損は得をするための貯金

中谷:はい。だから得をしたらその関係は終わりですから。

 得をできる貯金をまだ持っている。このことを信用といいます。回収したら終わりです。これは帳簿上に残らないし、税務署も来ないです。だって計上のしようがないから。あなたにはこんなに信用があるから、そのうち50%を納めてくださいということは言わないから。ところが回収には税務署は来ます。それは当たり前です。

大城:経営者ではなくサラリーマンも、それを意識した方がいいんですか。

中谷:意識しないとだめです。一番サラリーマンがこの点が下手です。経営者はできます。それから下町のおっちゃんはやります。下町のおっちゃんは、どれだけ自分が損をするかを考えています。だからサラリーマンが一番、今日1日の清算で生きています。

 海外で上流階級と下層階級、富裕層と貧民層でも分かれます。貧しい層は、給料をあと10%あげるからうちに来ないかといったら、もうすぐ来ます。ところが上の方は動きません。損をしても動かないです。日本はその中間ぐらいなんだね。

大城:交渉相手がいれば損をしても、いいということでしょうか

中谷:さっきお話ししたピザで言えば、ナポリの店が大勢のスタッフにごちそうするというのは損じゃないですか。その分、テレビで放送されて、それで日本のお客さんがどかっと押し寄せてきたら、それで回収はできるわけですよ。ところが、これ損だからちゃんと料金を取れと店長が言ったら、その時点で別のお店がサービスしたら、テレビの尺はそっちの方にいっちゃいます。

大城:ピザのお代としてもらったら、もうそこで回収は終わっちゃう。

中谷:終わりです。ましてや島のお店のように、前の店でごちそうになったからここでもごちそうになるかと思っていたら、お代を取ったもんだから、そういう印象が残ってしまう。本当はケチじゃないんですよ。普通に取っただけなんですよ。

 ところが、ごちそうするというお店が出てきた時点で、それと比較すると相対的にケチということになってしまう。だから、ケチという評判が残る。