中谷彰宏(なかたに・あきひろ)
作家。大阪府出身。大学卒業後、博報堂に入社。8年間にわたりCMプランナーとしてTV・ラジオCMなどの企画演出・ナレーションを担当。1991年に同社を退社し、「株式会社中谷彰宏事務所」を設立。ビジネス書から恋愛エッセー、小説まで多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。著作は1000冊を超す。私塾【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー・ワークショップ活動を行う。
中谷彰宏公式サイト

中谷:プロは演技がいるでしょう。例えば、テレビに出る人が何か質問されて、本当のことを言ったら普通の人になっちゃう。みんな大体、同じような答えになるんですよ。でもそれではテレビに出る人じゃなくなる。演技者でなければいけない。

 多くの人が頭の中では普通のことが浮かんでいるのです。そこを、これを言っちゃったら番組的には使えない。ディレクターにカットされてしまう。テレビに出ている人間、プロフェッショナルとしては最低な答えだ。だから違う答をしなければいけないということを考えている。

 見ている人は、もともとこの人は面白い人だと思い込んじゃっている。それは間違いです。そんなことはないです。もともと面白い人が普通に話して面白かったら、それは天然で終わっていくんです。消費されて、もう飽きたとなるんです。そこは演技でなければいけないんです。

大城:先生は本当に頭の回転が速いからできるかもしれないですが、皆さんがそうとは限らないような気がします。

ゴルフ接待の達人は「ナイスショット」と言わない

中谷:そういうことができる人のみが稼げるんです。演技ができる人が稼げる、ということです。みんなと同じことをしていたんでは、みんなと同じ収入しか得られない。

 相手から情報を取るためには、とにかく相手を気持ちよくしなくちゃいけない。これは接待のゴルフで、さっきの接待の達人の話と通じるところがあります。達人に聞くと、ナイスショットの言い方が全然違うんですよ。普通は、「ナイスショット」と言う。これは、どこかの国がロケット打ち上げ成功のときの後ろにいるおじさんたちと同じ。あの人たちは接待に連れていったとしたらたぶん最低。だって見え見えでしょう。早いよね、拍手が。ロケット打ち上げと同時ぐらいに拍手している。本当に感動する人って、わあって見上げて、手をたたくのを忘れて涙ぐんでいる。それが本当だからね。

 その人は接待のゴルフでどうするかというと、「ナイスショット」と独り言を言う。続けて「あれは打てない」と小声の独り言を言うんです。「ナイスショット」と大声では言わない。

 相手に警戒されたらだめなんですよ。情報戦で一番大事なことは、情報を持っているということがばれてもだめ。これは暗号戦でもそう。第二次世界大戦のときにドイツ軍の暗号器「エニグマ」をイギリスのアラン・チューリングが解読するんですけど、解読したことをばれないために一回見送っているんですよ。それで船が撃沈されているんです。分かっていたんだけど、その船を逃がしたらエニグマを解読したことが分かるから、こんなところで使っちゃいけないと。これが情報戦なんです。

大城:『日経ビジネスオンライン』の読者は管理職の方が多くて、激しい大企業の競争の中にいると思います。

中谷:情報戦のレベルのけたが違うということですよ。上の方へ行けば行くほど。ずっとぼけているやつが一番危ないということですよ。「君は詳しいね」、みたいなことを言われたらもう危ないですね。

 もう本当に何もできないふりをしているおやじが怖い。みんなが知っているイギリスの秘密情報部、MI6のようなスパイって、普通のおやじだから。『007』は映画だからね。もしジェームス・ボンドみたいなスパイがいたら48時間生き延びれないって。かっこよ過ぎるんだもん。目立つわ、それは。