「怒るギリギリライン」を探って交渉上手に

 逆を言えば、相手が怒るところを発見できれば、対人関係において優位に立てる、ということです。交渉ごとにおいて、相手が何を考えているのかがわかれば、半分以上の確率で勝つ可能性がでてきます。対策を打つことができるからですね。

 ですから、相手の人がどのようなところで怒るのか、そのラインを知ることは非常に重要になってきます。冒頭にも書きましたが、人は怒ると思考が鈍ったり、停止してしまいがちだからです。そこをつくのが絶妙にうまいのも華僑が交渉上手と言われるゆえんです。

 まず、交渉相手がどのようなことで怒るのかの「アタリ」をつけることがとても大切です。「アタリ」をつけたら軽くタッチしてみて、怒るギリギリのところを見極めます。中国人社会で一番重要視されるのは言わずと知れた「メンツ」ですが、日本人同士であっても相手のメンツを潰すような怒らせ方をしてはいけません。あくまで、どの辺りで「イラっと」するのかを探っていきます。

 例えば、ドアを強めに閉めてみる、書類を渡すときや書類を受け取るときに荒っぽくやってみるなど。これで相手が「イラっと」したら、丁寧な対応を大切にする人であり、それを守っていれば、第一関門はクリアできる人だとわかります。

 「イラっと」したかどうかは、口を見れば一番わかりやすいです。大抵イラっとしたときは顎を突きだすか、前歯の上下の歯を合わせるような動きをします。ポーカーフェースを意識している人は、奥歯を噛みしめるような動きを示します。口を左右に引っ張るようにする人もいます。

 「イラっと」するラインがわかれば、そのギリギリをついて相手の集中力を下げていきます。先ほどの例で見てみると、ドアを強く閉めるもののノブには両手を添えて丁寧さを演出することによって、相手は「イラっと」しそうなのを飲み込みます。書類の受け渡しでは、雑に鞄から取り出したものの渡すときはゆっくりと渡す。すると、相手は「イラっと」しそうになりつつ、平常心を保とうと意識が散漫になります。このようにギリギリをついていくことによって、相手の感情を揺さぶることができますので、色々とミックスして小出しにすることによってこちらのペースに持ち込んでいくのですね。

ある言葉を口癖にすれば、「イラっと」しなくなる

 逆もしかりで、こちらも「イラっと」したり怒ったりしてはいけません。少々のことで感情が動く人だと軽く見られたり、軸がぶれる人、最悪の場合は情緒不安定な人という烙印をおされたりしかねません。そこまで極端な評価にならなくても、すべてがコモディティ化している現代社会において、自身や自分の扱う商品を差別化するのに不利になるのはここまでお読みいただいた方には想像に難くないでしょう。

 「イラっと」したり、怒らないようにしたりするための方法があります。まずは訓練から始めて、だんだん慣れてください。するとそれが当たり前になってきますので、交渉ごとや的確な状況判断がどんどん得意になっていきます。