「ははは、それは心配しすぎかもしれないけれど、リカレントは大切だよ」

 「政府の骨太方針2018でも議論されていたリカレント教育でしょうか? 今から大学院へ行く、などを部長はオススメなのでしょうか?」

 「ん?、今のところは、日本の教育機関自体が企業の実態に即した教育をできていないことも多いから、大学院へ行くことを勧めはしないけれども、自分で自分をしっかりと教育していくことは大事だと思うよ。勉強は学生時代で終わり、という時代じゃなくなった」

 「それはなんとなくわかります、やはりITやAIの分野を学んでおけばいいのでしょうか?」

 「興味の分野は人によって違うので、一概には言えない。ただ、ビジネスパーソンとしての基本はコミュニケーション能力になる。今後国際化が更に進めば、いかに有利に駆け引きで勝利するかを磨くのはオススメだよ。AIが普及しても必要とされるのは人間のスキルだよ」

 「駆け引き、ですか? たくさんの技がありそうですが、一つだけ覚えるとしたら何がよろしいでしょうか?」

駆け引き上手になるためのキーワード「メンツ」

 「駆け引きをさせないことが、最高の駆け引きテクニックだ。相手の利と理を常に考え、尊重する。利とは相手の利益、利害。理とは相手の理屈、理論。尊重することと信用することは違う。華僑たちが駆け引き上手なのは、相手のメンツを立てながら交渉するからなんだ。相手を気持ちよくさせながら、難しい場合でも、相手の気分を害さないような伝え方をどんどん学んで行けばいい。その根底をなすのが、100%の善も100%の悪もない、だ」

 「100%の善も100%の悪もない、ですか?」

 「そうだ、ビジネスのみならず、何事も相手を信用し、相手から信用されることがとても大切になる。だから、部下も上司も信用する。ただ、相手がすることを100%信用してはいけない。相手と相手がすることは別物として考えること。そうすれば、罪を悪んで人を悪まず、聖書にあるグローバルスタンダードな考え方に順応できるようになるよ」

 「人と出来事を別物として捉える、ということでしょうか?」

 「正解。それが駆け引きをさせない第一歩となる。まず、それを常に意識して過ごしてみたらどうだろう」

 「ありがとうございます。あれやこれや、色々と人間関係とビジネスの結びつきに悩んでいましたが、スッキリしました」

 いつも疲れた感じだったTさんですが、2週間後、溌剌とした顔でオフィスで仕事に張り切っている姿がありました。自己主張が強くないのに、うまく相手の気分をよくさせながら、自分の意見をうまく通すあの人は、相手のアンフェアを出させない、“ずるゆるマスター”かもしれません。

 拙著『華僑の大富豪に学ぶ ずるゆる最強の仕事術』では、中国古典の教えをずるく、ゆるく活用している華僑の仕事術を「生産性」「やり抜く力」「出世」「マネジメント」「交渉術」の5章立てで詳しく解説しています。当コラムとあわせてぜひお読みください。