そのためにまずは、相手の「利益」と「行動」の関係を理解することです。例えばあなたが起業や転職を考えているとして、上司が引き留めにかかったなら、それは上司にとってあなたの存在が利益になるからです。起業や転職をしたあなたを元上司が邪魔をしてきたなら、それは元上司にとってあなたの行動が不利益になるからです。

 実はこれは私が実際に経験をしたことでもあります。私が退職願を出した時に、ある上司が「君の部署を作るから、そこで頑張ってみないか」と引き留めてくれました。ですが、その新しい部署は作られず、別の部署に異動となったのですが、そこでの居心地が悪く、結局退職して起業しました。

 起業し吹けば飛ぶようなベンチャーといっても、同業界での起業だったのでお世話になった会社のお客さんへのアプローチは完全封印。それでも邪魔をしてきたのは、私を引き留めてくれた元上司でした。少々ショックを受けましたが、その元上司は仕事をしただけです。会社員としての自分の利に則った善なる行動をしただけなのです。

 人として信頼できる仲間や部下に恵まれた現在でも、彼らの仕事を信用しないのはお互いのためだと思っています。いくら優秀な人でもミスはします。それなのに「君という人間に全幅の信頼をおいているよ」などと言ったらどうなるでしょうか。その人にとっては、信頼を損なわないためにミスを隠すことが善になってしまうのです。

 韓非子には、君主に取り入る臣下について危ぶむ記述が多く見られます。現代でいえば、社内政治に必死になるあまり、組織が弱体化して外敵にやられてしまうパターンです。そうならないためにも、「あなたを信用するのと、あなたの仕事を信用するのは別だ」とハッキリさせておいた方がいいですね。

したたかに、しなやかに。“ずるゆる”的リカレント教育

 それでは“ずるゆるマスター”の事例を見てみましょう。

 Tさんは困っています。インターネットの普及でいつでもどこでも便利なユビキタス社会になり、場所を選ばずに業務を遂行しやすくなったのはいいのですが、常に仕事のことが頭から離れないようになっています。

 休日の出勤のない日も、何気なくスマホでメールチェックが癖になってしまっているのも気がかりの一つです。そのような状況下、部下や上司と直接顔をあわせる機会は確実に減っているものの、次から次へと新しい業務アプリを覚えて使い、時短を実現しつつも、成果は今まで以上に求められるようになっています。誰を信じ、何を信じたらいいのかわかりません。

 悩んでいても仕方ないので、役員間違いなしと噂されている“ずるゆるマスター”のO部長に相談することにしました。

 「というわけでとても悩んでいます」

 「なるほど、正直に話してくれてありがとう。そうだね、最近の世の中の動きはめまぐるしいね。IFRS(国際会計基準)の資産計上の仕方も見直されるようだし、大企業の突然倒産も今後増えるかもしれないね。のれん代を資産ではなく、費用扱いにされたら、決算が悪くなるところも多くなるだろう。ただその結論は2021年だ。それまでに対策しておけばいいよ、個人として」

「時短と労働生産性のアップは常にセットなのは自覚しておりますが、昨日までの常識が明日、突然真逆になるような怖さを感じております」