知らず知らず、部下をずるくしてしまっていた!

 それでは“ずるゆるマスター”の事例を見てみましょう。

 中間管理職のWさんは悩んでいます。連日報道される「働き方改革」の影響もあり、会社としても残業を減らしつつ、業績はアップせよ、居心地のいい職場を作れ、のお達しがありました。

 Wさんはこれまで額に汗し、時には寝不足になりながらも真面目に会社のためと思って頑張ってきました。その頑張りが認められたのかはわかりませんが、早くもなく遅くもなくではあるものの、それなりに順調に社内等級は上がってきました。

 しかし、自分の年齢が高くなったからなのか、デジタルネイティブ世代が職場に増えたからなのか、理由はわかりませんが、近頃は管理職としてどのように振る舞っていいのかがわからなくなっています。

 Wさんが20代の頃の上司たちは「私たちの世代はこうだった。君たちも私たちの背中を見て学びたまえ」と言い、Wさんはそれを愚直に実践してきました。会社の外での、いわゆる飲みニケーションを大切にすることも、その一つです。ですが、最近の部下・後輩たちは退勤後の一杯のお酒に誘っても「それには残業代はつくのですか?」と言う始末。

 管理職としてしっかりとマネジメントせよ、マネジメントできないものは出向が待っている、という暗黙のプレッシャーもあります。今、出向を命じられたら、住宅ローンから子供の塾代から何から何までライフプランが狂ってしまいます。

 焦れば焦るほど、もうどうしていいかわからず、叫び出したい気持ちになることさえあります。

 「一人で悩んでいてもしょうがない、P部長に相談しよう」

 いつも飄々としていて何を考えているかわからない“ずるゆるマスター”のPさんは、最年少で部長となり、役員の呼び声も高い業務部の部長です。

 「というわけで悩んでおります。情けない話ですが、どうしていいかわかりません」

 「正直に話してくれてありがとう。ところでW君の直属の部下は何人だい?」

 「そうですね、スタッフと呼ばれるアルバイトの子たちも含めて20人です」

 「なるほど、20人くらいになるとマネジメント能力が必要になってくるね。一つずつ紐解いていきたいのだけれど、一番困っているのは何?」

 「一番ですか? 私は強く言ったり、大声を出したりしない方だと自覚しているのですが、イエスマンばかりで全てを私が決めないと物事が進まないのです。もうみんないい年のビジネスパーソンなのですから、もっと自主性を持ってもらわないと、私自身、全部に目が行き届きません」

 「部下の前で好き嫌いを言ったりするのかな?」

 「最近は減ってきましたが、タバコが苦手です。あと、日報が出ているかどうかはキッチリとしてもらっています。好きと言えば、私が実践してきた30分前出勤は徹底されていると思います」

 「W君の前でタバコを吸わず、日報を出し、30分前出勤をしていれば、W君はそれなりに気分がいいということで間違いないかい?」

 「はい、それはみんなやってくれていると思います。そこには不満は一切ございません」

 「ははは、面白いことを言うね。W君の好き嫌いをしっかりと部下たちはわかってそのようにやってくれている。それなのにW君はモヤモヤ感で悩んでいる」

 「……」