有能さを誇示する上司は部下に使われる

 自分の好みを出してはいけないのだから、実績や経歴で部下や後輩にいうことを聞かせよう、と考えた人は、少し読みが浅いかもしれません。人は利で動きます。上司・先輩であるあなたの利益があるように、部下・後輩にも自分個人としての利益があります。

 上司が有能だとわかれば、上司をうまく使って後で逆転しようと考える器用な若者も少なくありません。年功序列制が崩れつつある現代において、若い人が抜擢される場合の多くはこのパターンです。上司が力や実績を誇示して気分良くなっている間にそのノウハウを盗み、場合によっては実績までも奪っていきます。

 だからといって無能や無邪気を装う必要はありませんが、部下や後輩にしっかりと働いてもらい、彼らをまとめていくことを考えた場合、上司・先輩の力量をむやみに見せつけてはいけません。若かりし頃、プレーヤーとして個人の能力で頑張ってきた人はこのパターンに陥りがちになりますので、注意してください。

 韓非子は次のように述べて、上司や先輩が力を見せつけるのを戒めています。「智を去りて明有り、賢を去りて功有り、勇を去りて強有り」。意味としては「賢い君主は自分の智恵・才能・勇気をひけらかさず、部下にそれらを発揮させることによって良い結果を手に入れる」でいいでしょう。

 上司・先輩が智恵や才能や勇気を見せることによって、ずるい部下はそれに甘えるようになり、最後の責任は上司・先輩にある、と心のどこかで思い、行動を制御するようになってしまうことを戒めている含蓄のある言葉です。

 この辺りを華僑は非常によく心得ていて、「私はできないけれど、君がもしできないとしたら、チームとしての評価が悪くなる、先が長い君への影響は計り知れないよ」と、それとはバレないように恫喝まがいのことをして相手を意のままに繰るのを得意としています。

 商談にしても、企画書作成にしても、上司の上にはまたその上司がいる、というのは誰もが知っている既知の事実です。あまり有能さを下の人に見せると最終的な責任は上司、先輩がとってくれるだろうという、部下後輩たちのずるさを出させる結果になることをくれぐれも注意したいものです。

 華僑たちがよく口にする言葉に「ずるい=賢い」「賢い=ずるい」というものがあります。部下や後輩にずるさを出せないのも愛情あるコミュニケーションの一つです。なので、本コラムはずるさをゆるく使っていきましょうということで「ずるゆる」なのですね。