マニアの世界は奥が深く、底がないのではないか、というくらい深いのは皆さんご存知の通りですが、マニアックな話というのは、それに興味のない人にとっては苦痛以外のなにものでもないでしょう。誰しもマニアの人にそのマニアックな話を延々と聞かされた経験があるのではないでしょうか?

 実は「一を聞いて十を知る」は一歩間違うと、それと同じような状況に陥る可能性があるのです。団塊の世代の方達が活躍した時代の日本においては、多少面倒だなと思うような話でも我慢していれば、今日より明日、今年より来年はさらに良くなるという確信が皆の中にありましたので、面倒なことも耐える文化が日本社会にありました。

 ですが、現在は3年先を読むのも難しいくらい、生き方自体が非常に多様化された時代です。多様化された価値観をもった人たちが集う会社という集団において、「一を聞いて十を知る」ことができたからといって、それを披露してしまうと、淡々と粛々と業務を遂行したい人にとっては、マニアのマニアックな話と変わらない、と取られかねません。場合によっては、「余計なおせっかい野郎」というレッテルを貼られる危険性さえ秘めています。

10知ればまず1.5~2の対応をしてみる

 「一を聞いて十を知る」人も、一部の天才を除いて大半は努力によってその頭の回転の良さを手にいれているはずですから、それを無駄にするのはもったいないと考えるでしょう。ですが、もったいないことにはなりません。聞かれた時に「いつでも答えられるようにしておく」ことによって、必ず、人知れず磨いた刀を使う時はきますので、その時まではソッと鞘の中に懐刀をしまっておくのが賢い処世術です。

 と聞くと、ずっと黙っていればいいのだな、と考えるのは早計です。聞かれたことに対しては「完璧だ」と思われるような回答を用意しておけば、高い可能性で、更に突っ込んだ質問をされることになるでしょう。

 「一を聞いて十を知る」という状態なのですから、指示待ち人間の人が1の指示に対して1の行動しかとらないのと比べて、まず1.5~2くらいの行動をしてみるのです。それ以上を求められている場合は、上司やその利害関係者の人が要求してきます。それに対してしっかりと回答、返答していくことによって、自分の準備万端さやお役立ち度をアピールせずとも気づいてもらうことができ、力が発揮できるようになります。 

 話さないことと同様に、聞かないことも重要になってきます。人は話したいことや自慢したいことは聞いてほしいと思っていますが(弱っているときは愚痴など)、必要以上に聞かれる(質問される)と警戒します。警戒されることほど、敵を作ったり、ライバルを刺激したりすることはありません。絶対に警戒をさせてはいけないのです。質問力などの書籍やセミナーなどが花盛りですが、それらも時と場合によりけりで、使い方を間違えると、必要のない警戒心を自分の周りに起こさせる愚を自ら招いてしまうことになります。

「聞かない」ことの2つの効用

 「聞かない」ことの効用がわかれば、無用な質問をせずに済むと思うので、その効用をお伝えしましょう。効用の一番目は、相手がこちらのことをバカだと思わないという効用です。ただそのためには、質問をしないまでも、あなたの考えていることを知っていますよ、わかっていますよ、というのを匂わせることが必要です。ここでのポイントは、あくまでも匂わせる、です。直接言ってしまうとそれが原因でトラブルを招いてしまう可能性がありますし、前述のように警戒されるようになります。