会社の上層部からも現場からも、そして国家からも働き方改革という旗印のもと、業種業態に関わらず、生産性向上が叫ばれるようになりました。単に生産性向上というわけではなく、世相を表すかのように同時に労働時間短縮も両立せよ、の大合唱です。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国中で日本のホワイトカラーの労働生産性が低い、というデータは各所で引用されていますので、それを目にされた読者も多いと思います。戦後の奇跡と呼ばれた日本。ただ上記のデータが示すように労働生産性は低い。言葉は悪いですが、日本人はあまり器用ではなく、どちらかというと不器用と分類されるような仕事のやり方しかしていないのでしょうか?

 実はそんなことはないのです。日本人は勤勉で真面目、一生懸命働く、というのは世界が認めるところです。それを表すように製造業における労働生産性はOECD加盟国中上位に常に位置しています。ホワイトカラーと呼ばれる人たちだけが製造業に従事している人たちに見劣りするとは誰も思わないでしょう。

 日本のホワイトカラーの労働生産性が低い理由は明らかです。それは「過剰サービス要求」「過剰サービス体制」です。日本人の誰が言い出しかは定かではありませんが「お客様は神様です」の掛け声よろしく、これでどうですか、これでいかがですか、もっとこうですか、とサービスの嵐状態になっています。

 確かにお客様は神様ですと呼んでもよかった時代がありました。大量消費が行われた少品種大量生産の時代に、軒先に並んでいる商品を値引き要請もせず購入し、クレーマーなどの言葉がなかった時代は、それで企業も潤い、そこで働く人たちも今日よりも明日、今年よりも来年はもっと良くなると信じていればそれが実現していく社会構造でした。勤勉で伝統を重んじる日本企業はその時代の慣習を今も続けることによって苦しみ、労働生産性の低下を招いています。

 そんな状況下において、世界各国においてお金儲けの代名詞とも一部で言われている華僑たちの考え方や働き方は非常に参考になります。「衣錦環郷(いきんかんきょう)、故郷に錦を飾る」を誓って祖国を後にする華僑たちは、言葉が不自由な中でも、自分や親族のメンツを守るためにも失敗は許されない、成功以外は帰郷さえできない状況の中、常に生産性向上、スピードアップを意識した行動をとります。そんな彼らのスピードや思考を支えているのが、中国古典です。