それでは“ずるゆるマスター”の事例をみてみましょう。

「ノミニケーション」まで禁止!?

 計量器メーカーに勤めるXさんは営業3課の課長です。最近、Xさんは真剣に悩んでいます、会社を辞めようかどうかということを。去年までのXさんは「仕事が趣味でしょ」と奥さんや同僚からも揶揄されるくらい仕事をすることにやりがいを感じ、体の疲れはあるものの充実した日々を過ごしていました。

 ですが今年の1月にアメリカ系の同業会社との合併が決まってから、週1回開催される「社内合理化会議」が無性にストレスに感じるようになっていました。まず最初にXさんを驚かせたのは、社員同士のノミュニケーションの禁止です。

 それまでのXさんは、仕事の会話だけでは部下の本当の気持ちを知ることはできない、という信念のもと、最低週に1回は部下たちと飲みに行っていました。そこでなされる会話の数々で救われた部下は数知れず。女子社員が失恋で仕事のみならず、生きることへの活力さえも失いそうになっていた時も、ノミュニケーションを繰り返すことによって、前向きに立ち直らせることができました。

 それに追い打ちをかけるように、社内での連絡はすべてグループウエアを使って完全IT化されたのです。営業3課は、営業1課、営業2課よりもチームワークが良いことで知られ、営業先は違うものの、同じ営業部内で3課に異動願いを出す人もいるほどの居心地の良さを誇っていたのですが、その理由の1つに「なんちゃって会議」があります。この「なんちゃって会議」はXさんの発案でできた課内会議で、一人必ず1つは冗談を言ってから発言するというものです、これが完全に消失することになりました。

 社内合理化はどんどんエスカレートしていきました。電話は必ず3コール以内に取らないといけない、私語は厳禁、始業中はスマホを見てはいけない、それまではその日の内に出していれば良かった営業業務課へのオーダーは午後3時までしか受け付けない、会社支給の携帯電話では予め会社に報告している得意先番号しか電話できず、もしそれ以外に電話をかける場合は上長の許可がいる。 

 あれだけ活気に溢れていた営業3課でしたが、日に日にみんなの顔が冴えなくなるのがわかり、それをXさんは見ていられなくなりました。「1日の大半の時間を過ごす会社。一生の内の半分以上の時間を捧げる会社。もうやってられない、無理だ。最後にB部長にご挨拶しておこう」

“ずるゆる部長”の抜け道指南

 B部長は、一度は左遷? と思われるような人事異動を経験したのち、見事に最年少で部長に昇進した“ずるゆるマスター”です。Xさんの新人時代の上司でもあります。