「それは簡単だよ。質問をするだけだ。Twitterのことでもいい、Instagramのことでもいい。自分の子供がどのように使っているのかを知りたい、という感じで彼らに質問を投げかける。どのような仕組みになっているのかくらいはすぐに答えてくれるだろう。
その時に、『うちの娘はなんて危険なことをしているんだろう、そんなのすぐにどこの誰が投稿しているのかわかるじゃないか。危機管理能力が乏しいにもほどがあるよね』とあくまで部下ではなく、自分の子供のことのように話す。そうすると次は彼らから質問してくるはずだよ、どのようなリスクがあるのか、と。その時に、『君たちはどのような使い方をしているか教えてくれる? どこが危険か教えてあげるよ』と言えば、その瞬間からT君は陰陽の陰になり、彼ら若手が陽になる。陽はいわばスポットが当たった状態になるので彼らは饒舌になるはずだよ。同じように業務に関しても、常に彼らを陽になるような誘導質問をしていくべきなんだよ」
「なるほどですね、そういう手があったのですね」
上司を陽に立たせる=上司を出世させる

「次はT君の上司に当たる次長、部長に対してだけど、それも同じだよ。上司が陰陽の陽になるような行動、態度を取るべきなんだ」
「部下たちと同じように次長や部長にも質問を投げかけていく、ということでしょうか?」
「その場合は違う、逆だよ。次長や部長の仕事が順調に進むように、彼らの立場になって考えた行動をとる。T君は次長や部長から指示をされていると思っているけれども、指示をされていると思っている時点で、T君は常に陽の立場になり、ミスがあれば当然T君がクローズアップされるし、上手くいったらいったで当然、指示を出した彼らの実績になる。ここだよ。上手くいったら上司の実績になるということは、彼らがその時点で陽になる。T君が常に陰のポジションで居心地良く過ごし、順調に昇進するためには、上司が陽になるための行動、言動を心がけるべきなんだ。答えは簡単、上司が出世する手伝いをすれば、常に自分は陰になれる。出世した上司は誰に助けてもらったのかは忘れないものだよ」
「ありがとうございます。目から鱗です。なんだか元気になってきました」
次の日からTさんはため息をつかなくなりました。ため息をつくどころか、時折、一人ほくそ笑んでいるようにも見えます。それと同時にTさん率いるチームは3カ月後の会社の創立記念日の催しで優秀チーム賞を受賞しました。
目立つわけでもなく、自己アピールもしないのに何事も順調にこなすあの人は「陰陽」を理解している“ずるゆるマスター”かもしれません。
「陰陽」のポジションを活用した華僑流のコミュニケーション術ついては、拙著『「「華僑」だけが知っている お金と運に好かれる人、一生好かれない人』にてさらに詳しく解説しています。ぜひ当コラムと併せてご一読ください。
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