真面目軸のメリットは、警戒されにくいだけではありません。悪事に加担させられにくい、ということです。権力者がどんなに自分を贔屓にしてくれても、権力争いに絡む不正などの悪事に手を貸せば、結局はあとあと自分で自分の首を絞めることになります。

 抵抗勢力から攻撃され、他の穴からは警戒され、挙句の果てに罪を負わされて元の穴からは放り出される、最悪のパターンですね。

 真面目軸を貫いていれば、意図せず悪に加担させられる羽目になっても、他の穴が助けてくれる可能性があり、そこから立て直しのチャンスを得られるでしょう。災い転じて福となす、まさに「危険」と「機会」の危機管理です。

職業観に見る「思考の順番」も成功のヒントに

 華僑流リスクヘッジをご理解いただいたのではないでしょうか? たくさんの穴を掘ればいいのだな、と。ビジネスパーソンにとってのたくさんの穴とは属する組織やグループでもありますし、個々人でいえば、それはスキルに当たるのかもしれません。

 前向きな読者の方は、「よし、たくさんのスキルを身につけよう」と勇んだ気持ちになったのではないでしょうか? 実はスキルよりも大切なものがあるのですが、それをご紹介する前に一つ面白い出来事があったので、ご紹介したいと思います。

 IT企業を経営する華僑の知り合いが面接での話を教えてくれました。「こういう人って、日本人には多いですね。ウチで働きたいという人と面接をしたんですけど、何ができますか? と聞くと『ウェブデザイナーができます』と言うんですよ。職業名ができる、と言われても……ですよ」。

 その話を聞いて私は、あるあるだな、と感じました。公務員の人が「公務員ができます」と言っているようなもので、なんだかとてもズレている回答ですが、職業を大切に考える日本人らしい答えだな、と思います。

 日本人にとって自分の職業や会社名というものは、自分のアイデンティティーを語る上で欠かせないものとなっています。それに対して華僑は職業というものに対してこだわりがありません。華僑の出発点は「○○になって成功しよう」ではなく「成功するため○○をしよう」だからです。縁を大切に考える彼らは与えられた環境で成功も目指しますが、それはあくまで縁ありきです。それよりも根底にあり、行動や思考の順番がそもそも日本人とは逆なのです。成功するために職業も選ぶのです。

 これは華僑のみならず、日本人が大好きなアメリカ人の多くもゴール達成のために何をすべきかを考える人が多くいます。ゴールから考えることを逆算思考とビジネス書などで紹介されていますが、ゴールから考えることが逆算、となるのはひょっとして日本人だけの特異な発想かもしれません。

 インターネットの普及で技術も情報も、差をつけにくい状況になっています。そんなグローバル競争で勝ち抜くためには、ゴール設定から行動を考える習慣がない多くの日本人はハンデキャップを背負っているのかもしれません。その思考は、やりたいことをやりながら、ゴールにたどり着けたらいいなあ、という時代錯誤か、才能に恵まれたごく一部の人にしか通用しない考え方かもしれません。