「Excelの関数が必要なら、オススメの書籍を紹介することもできる。それで学習しながらExcelの関数の必要性をY君自身が実感できる。それをP君がやってしまったら、Y君に丸投げ癖がつく。これは組織にとってもY君にとってもよくない。勿論、それが原因で次長へ報告書が1日遅れてしまったP君にとってもよくないよね」
「おっしゃる通りです」
八方美人は八方塞がり

「八方美人という言葉は知っているよね。誰に対しても如才なく振舞う人を軽んじていう言葉。八方美人は八方塞がりに繋がるんだ。八方塞がりとは、陰陽道でどの方角に向かっても不吉の結果を生じることなんだ。陰と陽の話は以前にもしたよね。自分は常に陰のポジションを取り、自分以外を陽のポジションにもっていく、そうすれば安泰という話だったと思うけど。P君は誰からも信用されようと思って、常に陽の立場に立っている、つまり常に光が当たった状態なので疲れた状態なんだよ」
「そういえば、思い当たります」
「それから。わかりやすいのでY君のExcelの話でいくと、彼がExcelをうまく使えないからといって、彼が全くダメ人間と思うかい?」
「いえ、そんなことはありません」
「だよね。Excelという業務の中のごく一部を微に入り細に入り、細かく指導しなくてもいい、ということにつながる。部分的なことと全体的なことを混同しては絶対にダメだ」
「はい」
「P君が先日、次長への報告が1日遅れてしまったのも、P君が今まで頑張ってきた中のごく一部のミスだよ。そんなことで落ち込む必要はない。遅れてしまったことをリカバリーすることはビジネスパーソンとして当たり前だけど、P君自身が否定されているわけじゃないんだ。遅れたその出来事に対して注意されたんだから、それはそれでしっかりと受け止めつつ、今まで通り頑張ればいい」
「なんだか、気分が楽になってきました。」
「P君も部下や同僚と付き合いもあるだろう。その時の私の必殺の奥義を授けよう。『そうなんですね』だ。これは同調も否定もしていないので、うまく付き合えるようになるよ。間違っても『そうなんですか』と言ってはいけないよ、それは否定されたと相手が勘違いするリスクがある」
「はい、そうなんですね」
「(笑)なかなかやるじゃないか」
「ありがとうございます。なんだか急に楽な気分になってきました」
翌日からPさんの退社時刻が早くなりました。ですが、最近、勤務時間中に時折見せていた苦虫を噛み潰したような仕草は一切ありません。目立つわけでもないのに、いつも評価されるあの人は、信用をコントロールしている“ずるゆるマスター”かもしれません。
華僑流の信用コントロールについては、拙著『「華僑」だけが知っている お金と運に好かれる人、一生好かれない人』でも詳しく解説しています。ぜひ当コラムと合わせてご一読ください。
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