新人時代から人事部にバッテンをつけられないように、研修や社内の催しにはいつもフル出席。配属先でも誰からも信用されるように、休みの日に旅行にいけば、会社へのお土産ものを一番に選んできましたし、誰か困っている人がいれば、自分の仕事そっちのけでヘルプするように振舞ってきました。

 その甲斐あって、Pさんの評判は社内で上々です。お客さん対応もしっかりと社内全部に行き渡るように社内の掲示板への書き込みも積極的で、社外からも悪い噂は一切ありません。Pさんはみんなから信用されています。

 そんなPさんですが最近、ため息ばかりつくようになりました。

 「若い頃は馬力で乗り切ってきたけれども、もう限界なのかな。仕事を捌ききれない…。こんな状態が続けば、今までの努力は水の泡と化してしまう」

 「そうだ、O部長に相談してみよう」

 O部長はそんなに目立つわけでもないのに、最年少で部長に抜擢されたやり手です。

 「というわけで、もう二進も三進もいかない状態です」

 「正直に話してくれてありがとう。P君の素晴らしい評価は私の耳にも入っている。よく頑張っているね。ところでP君、これから昇進して更に難易度の高い、そうだね経営判断などをしなくてはいけない立場になるためには何が必要だと思う?」

 「そうですね、今まで以上に部下のみんなに気を使って困っている人を助けてあげることであったり、組織の連携プレーの強化だったりでしょうか」

 「なるほど。間違ってはいないよ。でもP君は今でも仕事上や人間関係においてアップアップの状態になっているよね? 更にそれを強化して進めていく、という考え方なんだろうか?」

 「そこです。これ以上、気配り気遣いしていたら、私が本来すべき仕事ができなくなってしまいます」

自分を大切にすれば、余計なお節介に気づく

 「ということは、何がいけないかをわかっているはずだよ。部下たちに気をかけてあげるのは素晴らしいことだよ。でも会社というものの役割を考えて欲しい。会社という器は、一人では成し得ない事を集団の力で達成していくためにあるんだ。P君がみんなから好かれたい、という気持ちは痛いほどわかる。でも好かれるための行動だけが正解ではないよ。もっと自分を大切にしたらどうだい? ビジネスパーソン人生は長期戦だよ」

 「自分を大切に、ですか?」

 「そう、自分を大切にすると、人を大切にする方法も自然とわかってくる。ちょっと失礼な言い方になるけど、気を使わず、頭を使うべきなんだ。先日も部下のY君がExcelの関数がわからなくて、P君が代わりにやってあげたそうだね。それはY君にとってもいいことじゃない。極端な言い方をするとP君がY君の成長を阻害していることにもなりかねない」

 「そんな…、私は親切心のつもりだったのですが」