悪口を言われるのも、ある意味他者への貢献

 「今の時代は様々な考え方を受容できるかどうかで、ビジネスパーソンとしての資質が決まる。多様な意見を受容できる必要があるんだよ。自分とは違うものを排除するのではなく、受け入れるためには、まず自分軸をしっかりと持つことが基本になる」

 「自分軸……ですか?」

 「そう、自分軸だ。自分軸を持てば、多少納得のいかないようなことでも受容できるようになってくるよ。受け入れる準備が整っていることが前提になる。わかって欲しい、という気持ちは誰しもあるよね? だったら、まずは自分から色々な人の気持ちを受け入れる態勢を作っておいたほうがいい。苦手な人もいるだろう。でもその苦手意識こそが他人軸なんだよ。みんな顔も違うし、身長も顔も違うように、性格や承認欲求の度合いや場面も人によって全然違うんだよ」

 「そうですね、姿形が違うのですから、考え方が違っても当然ですね」

 「さっきF君は、チームのみんなが避けているように感じるとか、SNSで反対意見を書かれるって言ってたよね。そんなことはないと思うけど、百歩譲って、誰かがF君の悪口を言っていたとしても凹む必要はないよ、それは貢献なんだよ」

 「悪口を言われて貢献ですか? どういう意味でしょうか?」

 「悪口というものは言っている本人が一番気分が悪いものなんだ。それはわかるよね? そして、悪口というのは一人では言えない。誰かと一緒に悪口をいうことになるのだけれど、その時というのは、悪口を言うもの同士で連帯感が生まれる。連帯感だよ。冷静に考えてみて。F君をネタにして連帯感が生まれているということは、彼ら彼女らに貢献しているということになるのだよ」

 「気持ちがいいものではありませんし、後ろ向きな連帯感ですね」

 「そう。気持ちがいいものではないし、後ろ向きの連帯感だよ。でもそれによってその人たちはそれをキッカケにして盛り上がる。それを気にしているうちは他人軸だ。でも彼らにメリットを提供した。その連帯感がいいようになるように、働きかける努力をすることが自分軸をもつ、ということになるんだよ」

ジグザクがあるのは「自分が主役」の証

 「そんなことが私にできるでしょうか?」

 「できる。捉え方一つだよ。映画を観たり、小説を読んだりするかい?」

 「はい、たまに観たり、読んだります」

 「じゃあ、簡単だ。主人公には色々なことが起きる。何をするにも、邪魔が入ったり、想定外のことが次から次へと起こる。それは君が主人公だからだよ。通行人などのエキストラやちょい役の脇役には、何も起こらない。ジグザグがあるのは、F君が主人公になる見込みがあるからだよ。そのジグザグ道をしっかり歩いていけば、自分の人生の主役を演じきることができる、それが自分軸でやっていく、ということなんだ」

 「自分軸。主役、主人公ですね、なんだか銀幕スターになった気分です。スッキリしました。部長ありがとうございます」

 翌日からFさんはため息をつかなくなりました。ため息をつかないどころか、昨日までのFさんが別人かのように、イキイキとしています。悪口を言われても、想定外のことが起こっても、動じず、飄々と楽しそうにしているあの人は、自分軸を持って、自分の人生の主役を演じている“ずるゆるマスター”かもしれません。

 拙著『「華僑」だけが知っている お金と運に好かれる人、一生好かれない人』では、身の回りにいる厄介な人、苦手な人、嫌いな人など、ストレスの原因となる相手さえうまく受け入れる「華僑流ダイバーシティ・マネジメント」の事例を多数紹介しています。ぜひ当コラムと合わせてご一読ください。