ものは考えよう。人生のジグザクも悪くはない

 それでは“ずるゆるマスター”の事例をみてみましょう。

 Fさんは最近悩んでいます。理由ははっきりとしないのですが、気分が晴れないのです。職場での何気ない雑談にも愛想笑いをするだけで、心からくだけた気持ちになりません。飲みに行って少し酔いが回っても陰鬱な気分が取れません。気分転換になっていたSNSやネットサーフィンもストレスに感じてスマホを見るのが嫌になる時さえあります。夜はよく寝れていますし、朝も起きられますし、仕事の集中力が落ちたわけでもないので、鬱ではないだろうと思っています。

 「そういえば、最近いつ笑ったんだろう?」。いつ笑ったのかさえ思い出せない自分に更に嫌気がさします。「ダメだ、こんな状態が続いたら、仕事にもプライベートにも悪影響を及ぼしてしまう。そうだ、Y部長に相談しよう」。

 「というわけで、何かわからないのですが、グズグズと悩んでおります」

 「正直に話してくれてありがとう。ここのところF君の元気がないように見えるのを気にしてたんだけど、実際そんな状況だったんだね。ところでF君、チームのみんなとのコミュニケーションは上手く取れているかい?」

 「部長、実はあまりうまくいっていません。私がグズグズしているのをみんなわかっていて、私を避けているように感じます。匿名でやっているSNSにも反対意見を書き込まれたりして、集中砲火を浴びている気分です」

 「なるほど。いわゆる周りの雑音が気になる状態ということだね。F君は将来有望なので、少し厳しいかもしれないけれど、本当のことを伝える。雑音が気になる状態というのは、ライフサイクルが下がり傾向のときなんだ。でも、下がり傾向は悪いことじゃないんだよ」

 「えっ? 下がり傾向が悪いことではないのですか?」

 「そう。歌にも『3歩進んで2歩下がる』ってあるよね。あれは、足元を固めろ、というメッセージ。まっすぐ右肩上がりの坂を思い浮かべて欲しい。登るときは一直線に気持ち良く上がっていけるけれども、落ちるときはスルッと一番下まで簡単に落ちてしまう。でもジグザグしながらの右肩上がりだったらどうだろう? 落ちてもそのジグザグで止まることができる。今のF君はそのジグザグの一つにいると思ったらいいよ。その時に一番してはいけないのが、腐ること。次にいけないのが、継続をやめてしまうこと。この二つをしなければ、また上昇の波がやってくるよ」

 「そう仰っていただくと何だか気が楽になります」