同僚や部下のプレゼン資料を代わりに作成する、ということも始めました。これは書くことが好きなSさんにとっては一石二鳥です。社内で喜んでもらえるのはもちろんのこと、他の営業マンの人たちの行動や思考を手に取るように知ることができます。プレゼン資料の作成代行などは一見大変そうに思われがちですが、Sさんはスマートフォンで録音した音声を文字に変換する機能を使っており、機械の認識間違いの訂正をするだけでしたので、時間的な負担はほとんどありませんでした。

 「人と反対のことをする」という教えも実行しました。同じ営業部の人たちが「クレームだクレームだ」と言っているのを逆手にとり、「ご要望だご要望だ」ということで、喜んで代わりに営業にでかけていくようにしてから、平均点以上の成績を収める様になりました。

「みんなの評価」を鵜呑みにしない

 ダメだよね、とレッテルをはられているX係長にも接近しました。X係長と接する事で営業事務の女性KさんとMさんには要注意ということがわかりました。X係長はいい意味でも悪い意味でも、誰とでも平等に接する人だったので、ヤキモチやきのKさんとMさんの協力が得られず、部内でミスが起きればX係長がしたことにされていました。遠方への営業帰りにお土産を買うのは誰もがしていましたが、“ずるゆるマスター”になったSさんは絶対にKさんかMさんに手渡すようにしました。

 “ずるゆるマスター”のSさんは、トップ営業にもならずに気がついたら課長に、そして、課長職を淡々とこなしているうちに、花形部署へと異動となったのです。

 Sさんがしていることは、みんなが面倒くさがること、嫌がることをやることと、普通を避けるようにしているだけです。決して目立つわけではありませんが、いつも結果的に社内やお客さんのためになる行動につながるという不思議な雰囲気で、嫉妬心をもたれずにうまく会社人生を謳歌しています。

 特に目を引く業績や学歴、コネがあるわけではないのに順調に仕事をこなし、周りからのやっかみも少ないあの人は、実は“ずるゆるマスター”かもしれません。

 できるあの人は、面倒で嫌な事を引き受け、みんなが普通と思っている事と逆のことをやるだけで、特別なことはしていないのに気づきましたか? この2つに取り組むことであなたも“ずるゆるマスター”に近づけることでしょう。