子どもの成績アップも「その気」次第

 そして、最後に部長のお宅訪問です。「A君、おじさんはFと言って、君のお父さんと同じ会社で働いているんだ。どんなスマホをつかっているんだい? あっ、おじさんと同じ機種だね。あのアプリいれてるかな? ちょっとおじさんにA君のスマホ見せてくれる?」

 “ずるゆるマスター”のFさんはすかさず、Webブラウザでの検索記録をバレない様にチェックしました。「白人○○」「金髪○○」と年頃の男の子が検索しそうなワードが並んでいました。なるほど、落とすのは簡単だとFさんは後ろを向いてニヤッとしました。

 「A君、実はおじさんは若い頃、白人女性と付き合っていたことがあるんだ。おじさんより男前の友人を出し抜いてね。なぜだか分かるかい? 英会話力じゃないんだよ。社会で習った日本の歴史を教えてあげる、日本の学校で習う理科の内容について語る、日本文学についてうんちくを語る――。 うん、本当だよ。学校の勉強は役に立たないと思うよ、でもモテるためにはかなり有効なんだ。 中学校で習う程度を完全にマスターすれば、どこの国に行ってもモテるのはおじさんが保証するよ」

 2カ月後、L部長がやけににこやかな顔で「F課長、今晩つきあってよ、ちょっとした報告があるからさ」。「はい、かしこまりました。喜んで。では20時にお願い致します」

 20時に前回と同じ店で落ち合った2人はとりあえずビールを頼んだのですが、ビールがきて、お疲れ様の乾杯を待たずに、L部長が話し始めました。

 「F君、いやあ、ありがとう! 知っていると思うけど、わが部の活気が変わったね。みんな『その気』になってくれている。苦しそうにしていた一部の者もなんかそれなりに見える。一昨日、専務からお呼びがあって、鬼じゃなかった、ハッハッハ」

 「よかったですね」

 「それと、うちの長男。先日の定期考査で学年5位になったんだ。F君、息子に何を話したの?」

 「あはは、息子さんとですか? 他愛もない話です、忘れましたね」

 L部長が、順調にいけばいくほど、“ずるゆるマスター”のFさんを外すことはないでしょう。

 Fさんの素晴らしいところは、L部長に負担を感じさせずに、うまく周りを巻き込み、その人たちを「その気」にさせたことです。“ずるゆるマスター”のFさんがやったことは、ひたすらL部長のご機嫌取りをしただけです。それが会社のみならず、Lさんの家庭にも好影響を与えたのですね。

 ご機嫌取りのFさんの原動力は当然、「その気」力。Fさん自体がその気になっているので、周りに働きかけるときも、「やる気」を出すのでなく、その気で取り組んだだけなのですね。

 あなたの近くにいる、一見やる気、根性とは無縁なのに、ひょうひょうと結果を出す、彼・彼女は、もう「その気」で動いているのかもしれませんね。