「というわけで上から横から下からと八方ふさがりじゃないか、というくらい疲れ果てております」

 「正直に話してくれてありがとう。では一つずつ整理して考えてみよう。その前にR君にわかっておいてもらいたいことがある。それは何事にも免疫をつけることが大切だ、ということだよ。言うなれば、今のR君の状態はワクチンの予防接種をしなかったばかりに、辛い目にあっている、と」

 「そうですね、確かに部長のおっしゃる通りです。私には予め免疫力をつけておく、という意識が希薄かもしれません。お恥ずかしい話ですが、去年の冬も打たなくちゃ、と思いながらインフルエンザの予防接種をせず、見事にインフルエンザにかかってしまったという苦い経験があります」

 「へ~、そんなことがあったんだ。それは肉体的にも精神的にも辛かっただろうけれども、ビジネスパーソンとしてはリスク管理ができていないと言われても仕方のないことかもしれないよ。まあ、過去のことを言っても仕方ない。これからは体も人間関係もしっかりと免疫をつけていくことだよ」

 「はい」

サポートしているつもりが越権行為だった

 「では一つずつ説明するよ。まずは上から。R君の直属上司にあたるのは、次長だ。彼から見てR君はどのように映っていると思う?」

 「そうですね、課長職の中で、なんとなくですが私は目をつけられているような気がします。私がやることなすことを否定されていらっしゃるような…」と言ってRさんは下を向きました。

 「なるほど、次長はR君のことを否定しているように感じる、と。なぜそう感じるのかな。R君はITに詳しいから、次長も業務改善の分野で期待していると思うのだけども」

 「はい、私もそのように考えておりました。次長はITがお得意ではないので、次長の代わりに部長報告書や、回覧が部内でスムーズにいくように。そうですね、次長のお手間にならないようIT周りは全て私が代わりさせていただいているつもりです」

 「それは次長に頼まれたのかい? もしくは了解をとっているのかな?」

 「いえ」

 「そういうことだよ。足を引っ張る、という言葉があるよね。足を引っ張るのは、足が出ているからなんだよ。簡単にいうと悪目立ちしている、ということ。足を引っ張るというのは悪い言葉で使われることが多いけれども、実際は足を出ているから引っ込めなさい、という合図の場合もあるんだ。足が出ていたら、それに躓いたりしたら危ないよ、と。次長との関係でいうと、R君はやりすぎているかもしれない。もしくは了承を取っていない、ということは職分の越権行為をしている可能性が高い。気をつけてね、ちゃんと了承をとるように」

 「はい」