「優柔不断な上司」を賢く動かす「暗示」術

 悪徳上司、立派な上司、次に克服すべきタイプは、優柔不断な上司です。優柔不断な上司は、その判断力のなさがややもすると自分の立身出世に響くこともあります。

 優柔不断な上司には、逃げ道があることを伝えるのが有効です。優柔不断さは、ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう、と保身からきていることが多いので、逃げ道を示唆するのは非常に有効です。

 優柔不断な上司に決断を迫ると、誰かに責任をなすりつけたり、強行突破して逃げようとしたりする可能性があります。追い詰めてはいけないというのは戦争のプロの孫子も次のように言っています。「囲師(いし)には必ず闕(か)き、窮寇(きゅうこう)には迫ることなかれ」。直訳すれば、「包囲した敵軍には必ず逃げ道を開けておき、追い詰められた敵を迫害してはならない」となります。

 優柔不断な上司を逃げ道へ誘導するのは簡単です。逃げたい人は逃げ道を示されたら迷わずそちらへいくのですね。

 今すぐ誘導したい場合は、“今なら”逃げ道がありますよと時間を限定するようにすれば、決断を自然に促すことができます。これはビジネスにおいても華僑たちが使う常套手段で、今だったら大丈夫ですよ、今だったら損しませんよ、と囁き決断を誘います。

 優柔不断な人も「今なら逃げられる」と説かれれば動かずにはいられないでしょう。ですが、説くといっても、本コラムの読者の方は今まで本連載でお伝えしてきた「陰陽」を使いましょう。逃した後に自分が「陽」のポジションにいたら、逃げた後の責任を自分が負わされる可能性が出てきます。逃げた後の敗戦処理は大変なことも多いので、それは利口なやり方ではありません。

 自分が誘導するにしても、常に「陰」のポジションを取ることが大切です。そのためにはうまく事例などを使って暗示します。暗示しても、優柔不断な人を「陽」で反応させると警戒心から動きが止まってしまうことも考えられますので、相手にもあえて「陰」で考えるように仕向けましょう。

 例えば、新規プロジェクトの失敗が見え、早くやめさせたい場合です。順序としてはまず相手を肯定するところから入ります。

あなた「今すぐやめられないのは仕方ないことですよね」
上司「(心の中で)そうだよな、仕方ないよな」

 次に現実を認識させます。

あなた「何かいい打開策が出てくるかもしれませんし、今は我慢のしどきかもしれませんね」
上司「(心の中で)いくら考えても打開策なんてないよ」

 そして、逃げ道があることを示します。

あなた「そういえば、2課の○○課長が一昨年に立ち上げた新規プロジェクト。あれはいい結果が出ませんでしたが、今度また新しいプロジェクトを立ち上げるみたいですね。なんでも、前回の失敗を生かせるプロジェクトらしいですよ」
上司「(心の中で)そう言えばそうだ。私にもリベンジの可能性があるかもしれない……」

 ここで、今なら間に合うことを伝えます。

あなた「確か、○○課長は撤退も早かったですね。半年も経っていなかったのではないでしょうか」
上司「(心の中で)うちは7カ月か。今なら間に合いそうだな。前例もあることだし、撤退しても人事的に悪い評価にはならないだろう」

 このように上司自身の「陰」を操ることによって、上司自ら決断したことになり、上司の面目を保ちながら、決断を早めさせることができます。