インターネットの発達と普及によって人間関係のあり方が変化する中、ビジネス社会では上司と部下のコミュニケーションに関する新たな課題が出てきているようです。最近よく耳にするのが「距離を置きたがる部下が増えてリードしにくい」という管理職の声。何か困っていても自分から積極的に援助を求めてこないので、コミュニケーションが取りづらく状況が把握しづらい。先回りしてアドバイスを与えようとすると押し付けがましくなってしまう。部下が上手くいくように自分の経験を語りたいけれど「武勇伝」などと陰口を叩かれるのが関の山、どのようにもっていけばいいのかと、頭を抱える人も多いと聞きます。

 SNSで大勢の人とつながっている若い世代が、上司に頼ろうとしないのは、ある意味自然な現象といえるかもしれません。ネット上では情報があふれているだけでなく、さまざまな経験、知識をもつ人たちと交流できます。その人たちに問いかければ仕事の悩みなどもある程度は解決できるし、実名を明かさず気軽に相談することもできる。その気になれば、自分に足りない経験さえネットでカバーできると考える若者がいてもおかしくはないでしょう。

 もちろん、ネットに頼るより上司に頼る部下のほうがビジネスパーソンとして有利であることは間違いありません。上司の立場でしか知り得えない情報もありますし、利害を共にする上司のアドバイスは部外者のそれよりも真剣かつ具体的です。ですが、それをわかっていない人にわからせようと距離を詰めれば、敬遠されるのは目に見えています。

 では、どうすればいいのか? こちらから近づくのは得策ではないのですから、部下のほうから近づいてくるように仕向ければいい、ということになります。そこで多くの人は「部下に慕われ尊敬される上司を目指そう」と考えるでしょう。それはごく常識的な考えのように思えますが、華僑の常識は違います。華僑は「好かれようとするより、嫌われないことが大事」と考えるのです。消極的だと思われるかもしれませんが、実はそこに「ずるい=賢い」と言ってはばからない華僑の処世術があるのです。

「陰陽」を駆使すれば、目立たずに人を動かせる

 メンツ主義の華僑は、国を出る時に親族などから受けた援助を倍返しどころか10倍返しするくらいの気迫で働きますが、いくら気迫があるといっても誰しも使える1日の時間は24時間と決まっています。そこで彼らは差をつけるために「人を利用する」ことを常々考えています。それは自分が上司の立場であっても、部下の立場であっても変わりません。「利用」という言葉にアレルギーがある人は多いと思いますが、それは彼らも百も承知ですので、用意周到にそれとはバレないようにしています。

 バレないために、華僑は「陰陽」を上手く使っています。中国古来の「陰陽五行」の陰と陽、それを華僑流で使いこなしているのです。日本語にも陰気、陽気という言葉がありますが、少しニュアンスが違いますので、ひとまずここでは日本語的な陰陽は忘れてください。

 陰と陽は必ずセットで、どちらか一方の勢いが強くなりすぎるとバランスが崩れると考えられています。それは組織の人間関係も同じだと華僑は言います。人間関係における「陰」とは下がること、表に出ないこと。「陽」とは出ること、表に立つこと。自分の思惑に気付かれずに上手くやりたいなら、自分が「陰」になり、自分以外の人を「陽」にすればいいのです。自分が上司の立場であれば、部下を「陽」にする。自分が部下であれば、上司を「陽」にする。この法則を守れば思い通りにことを運べる可能性が高くなるだけでなく、上手くいかない場合もそれが目立ちにくくなるのです。