華僑はもっとずる賢く、それは由々しき問題だというものだけではなく、「少々の問題」と思っている段階で「事情」を使って「愚痴」を言わせます。事情という表現を使うことによって、「うまくいかないのは自分のせいではない」と相手を油断させ、他の誰かや組織の体制などのせいだという「愚痴」を言わせることで、隠れた情報を無理なく引っ張り出すのです。

 これについては『老子』の「知る者は言わず、言う者は知らず」も参考になるでしょう。意味としては「よく知らない人に限ってたくさん話す。よく知っている人は普段あまり話さない」という理解でいいでしょう。一見、「事情」と正反対に感じるかもしれませんが、そうではありません。ミスや問題をよく知っている本人はそのことについて多くを語りません。ミスや問題のことをよく知っているので黙っている、ということです。それを「事情」という言葉を使って「愚痴」として炙り出すのですね。

 逆に考えれば、自分の「事情」は上司などから問われる前に話しておくべきで、なおかつ「事情」は話しても「愚痴」は絶対に言わないのが賢明だということがお分かりいただけると思います。

「面従後言」の対策は窓口を置くこと

 自分が上の立場の場合、基本的に部下は「面従後言」であることを前提として対策するのがいいでしょう。面従後言とは『書経』を出典とする言葉で、面と向かっては従うが陰で不平不満などを言う、との意味です。怖がらせているつもりはなくても、部下が恐縮して直接言ってこない。それは仕方がないことだとして、都合の悪い話が入ってこないなど情報が偏ると、自分の仕事のスピードどころか組織のスピードを落としてしまうことになります。

 そこで対策として有効なのは「窓口」を置くことです。部長が新入社員の意見を聞きたい場合は、新入社員担当の係長にその役をしてもらう、などです。窓口になってもらうコツは、窓口になることによって優越感を持てるような仕組みにすることです。「社の新陳代謝に貢献してくれてありがとう」など簡単なお礼でも効果は期待できますので、試してみてはいかがでしょうか? 

日本企業の中間管理職は諦めモード?

 それでは“ずるゆるマスター”の事例をみてみましょう。

 戦略系コンサルティング会社に勤めるPさんは現在6社のコンサルティングを担当しています。6社担当というのは、繁忙期に比べるとまだマシな方ですが、Pさんは熟睡できない日が続き倦怠感を感じています。

 「よう、P君。どうしたの? 浮かない顔して。行き詰まっているクライアントさんでもあるの?」と“ずるゆるマスター”のW部長が声をかけました。

 「部長。そうなんです。300人規模の製造メーカーさんからのご依頼で、業績アップと時短の両立が課題なんですが…。どうも現場の意思疎通が上手くいっていないという印象でして、システム的なアプローチだけでは効果が出にくい状況なんです」

 「社長や役員がワンマンで意見が言いにくいといった問題はないのかな?」