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ガードを緩める秘策「敢えてアウェーへ出向く」

 「はい、仰る通りです。ですが、皆心機一転、今年は頑張るぞということで、何を頑張るかは内に秘めておりまして、ガードも固くなっております」

 「なるほど、ガードが固い、か。じゃあ、K君にとって敢えてアウェーを選べばいいよ」

 「アウェーですか? どういうことでしょうか?」

 「兵法三十六計にある『備え周なれば則ち意怠り、常に見れば則ち疑わず』だよ。 意味としては、防備が周到なら注意を怠り、普段見慣れている物事には疑いを持たない、でいいだろう。要するに、相手の安心感や慣れを利用して油断させる作戦だよ」

 「相手のホームへ行く、ということでしょうか?」

 「その通り。相手が安心する環境とは、相手のオフィスや常連として通っている喫茶店など、相手が見慣れた物事に囲まれた場所」

 「はい」

 「K君にとって、アウェーは不利に感じるかもしれないけれど、相手を強気にさせ、油断を誘うにはうってつけの条件となる。一つ注意点があるけど、相手のプライベートには踏み込まないように気をつけた方が安全だよ。相手のホームといっても、それはあくまでビジネス上のことで、迂闊に踏み込み過ぎないようにね」

 「相手が自分のホームと油断しているところをうまく利用して、陽のポジションを取らせるということですね」

 「正解。共通の話題から入り、相手の知識に対して敬意を表すことによって進んで陽に立ってもらうんだ」

 「思い出しました。その時には同調をうまく使う、でしたね」

 「冴えてるね、そう。ただ、気をつけなければならないのは、褒め言葉や賛同し過ぎはワザとらしい言葉と思われ相手を警戒させるから、『あなたほどは知らない』程度のリスペクトがちょうどいい」

 「相手が慣れてきて、会話が続いているのに、本心を隠し続ける場合はどうしたらいいのでしょうか?」

 「同調、傾聴から質問への転換だよ。例えば『ではこのような場合はどうしたらいいんでしょう?』といきなり質問に切り替えれば、相手の想定外をつける事が多くなり、準備していないことを話すことになるから本音の可能性が極めて高い。でもこれの多用は禁物、焦らない事が第一だよ。ここまでの流れをしばらくやってみれば、アウェーも悪くないものだよ」

 「ありがとうございます。なんだかスッキリしました」

 1週間後、溌剌とした顔で仕事をしているKさんの姿がありました。どのような状況でも居心地が良さそうにして、相手の話ばかり聞いているように見えるのに意見をうまく通すあの人は、「謀の道は、周密を宝とす」を徹底している“ずるゆるマスター”かもしれません。

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これまで『華僑直伝ずるゆる処世術』をお読みいただきありがとうございました。
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