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相手の内心を引き出す、自然かつ簡単な方法とは

 だからといって強制的に相手の心を抉じ開けることはできません。無理矢理ではなく自然に相手の内心を誘い出すには、まず相手が見せている部分を掴んで引っ張り出すのが得策です。

 華僑の師曰く「この世の現象の全ては陰と陽で説明できるんです。知っても知らなくても陰と陽は存在する。誰もが陰陽の法則で動いている。知っている人は陰陽をコントロールできる、それだけの話ですよ」

 陰陽とは、占いの元となっている『易経』の概念です。右があるから左がある、上があるから下がある、東があるから西があるというように何事も表裏一体といえばわかりやすいでしょう。右がなければ左は存在しないように、上がなければ下は存在しません。

 そんな陰陽を、良い悪いではなくポジションとして捉えて使い分けるのが、華僑流の「陰陽の法則」です。陰陽は必ずセットでバランスを保ちながら回転しているとされます。

 陰……見えない、裏、静、思考する、黙って聞く
 陽……見える、表、動、行動する、発言する

 内心を引き出す糸口を掴みやすいのはどちらかといえば、見えるポジションである「陽」です。つまり、相手の内心を知りたければ相手を「陽」にすればいいのです。陰陽はセットですから、自分が「陰」になれば、相手は「陽」になります。

 方法は簡単です。相手に「陽」のバトンを渡せばいいのです。例えば、「今日のランチ何食べる?」と相手に判断を委ねるのも「陽」のバトンを渡すことになります。「カレーライス」と言えば、カレーライスから子供時代の話へ、親や育った環境の話へ、考え方や価値観の話へと誘導していきます。

 こちらは話を聞くだけで相手はどんどん心を開いていきます。相手に主導権を渡したようでいて、実は自分が主導権を握る。陰陽を操れば、相手を主にしながら内心を引き出す事が可能になるのです。

華僑は「喋るスキル」より「黙るスキル」を磨く

 会話にも陰陽が作用していますので、うまくコントロールする事で意図を適切に伝えることはもちろんのこと、相手から聞きたいことを引き出すことも容易になります。

 会話の陰陽は次の通りです。

 陰……沈黙する、受信する、主張しない
 陽……話す、発信する、主張する

 通常、会話は話す(陽)と黙る(陰)の繰り返しで回転していきます。その場にいる全員が同時に話し続けても、黙り続けても、会話は成立しません。

 会話では「話す」のも「黙る」のも大事ですが、「会話のスキルを磨きましょう」と言われれば、ほとんどの人は話すスキルを磨こうとします。もちろん話すことで相手の心を操ることは可能です。弁舌爽やかに、あるいは熱弁をふるって自分の主張を伝え、相手を納得させ、賛同させる。これを格好良くやってのければ、周囲から素晴らしいと賞賛されるでしょう。

 ですが華僑流を考えるならば、賞賛を望んではいけません。賞賛されるということは、自分の狙いも作戦も周囲から見えているということだからです。