レシピには「なぜそうするのか」が書かれていない

 初心者がいろいろな料理の基本を学ぶために、レシピを参照することはある程度必要なことでしょう。しかしながら、だからと言っていつまでもレシピに従って作っているだけでは、あまり料理の腕は上がりません。

 大概のレシピには、「なぜそれをするのか」が書かれていません。ですから、ただ指示された手順に従って作っているだけでは、マニュアルに従っているだけの受身的状態になってしまうのです。

 しかし、どんな手順にも、必ずや何がしかの意味があるはずです。ですからレシピを見て作る時でも、「なぜその手順が必要なのか」「それは何のために行うのか」といったことを常に考えながら作業を進めることが必要なのです。

 学生の頃、私は自炊でよくチャーハンを作りました。当時は、今日のようにテフロン加工のフライパンがまだ一般的ではなかったので、私は鉄の中華鍋を使っていました。そのせいもあって、何度作ってもフライパンにご飯が焦げ付いてしまって、なかなかうまくいきません。

 それがある時、油を熱した後に溶き卵を入れて作ってみたところ、ご飯の焦げ付きが生じなかったのです。溶き卵が、油に界面活性剤的効果をもたらしたのです。卵をフライパンから取り出したとしても、残った油には界面活性剤的効果が残っていて、その油を用いれば焦げ付きの問題は生じませんでした。

 私はこの経験によって、チャーハンという料理に卵が入っている本当の意味が分かったように思いました。単なる色合いや栄養上の必要だけでなく、料理する上でどうしても卵を用いる必然性があったのだと。

 これは、ごくつまらない私的なエピソードかもしれません。しかし、これはレシピを見ずに毎回試行錯誤を重ねていたからこそ分かった、私にとっては実に感動的な基本原理の発見だったのです。

大概のレシピには、「なぜそれをするのか」は書かれていない。そのため「なぜその手順が必要なのか」「それは何のために行うのか」といったことを常に考えておきたい(写真:PIXTA)