「本当にそうだろうか?」という問いを一度は向けてみる

 また少々ややこしいのですが、元のA→Bは、「治った人」のことについて述べていただけであって、そもそもどうすれば「治る」という話ではありません。にもかかわらず、西洋医学ではあちらこちらで、このようなすり替えが平然と行われてしまっています。

 身近な例を挙げてみると、「風邪が治った人は、熱が下がっている」とは言えても、「熱を下げれば、治る」わけではありません。しかし、この過ちに気付かず、解熱剤を処方することが治療だと思い込んでいる医師もいるのです。

 同様に、「精神的に不調だと、不眠になることが多い」という現象の観察から、性急に「不眠を解消すれば、精神的不調も治る」という誤った結論を導き出してしまって、やたらに睡眠剤を処方してしまったりする精神科医も少なくありません。

 この種のすり替えは、つまり「症状が消えれば、病気が治る」という倒錯した信念を生みだしてしまい、現代医療の大きな問題点でもある「対症療法の氾濫」を引き起こしている一因であると言えるでしょう。

 それにしても、科学の一分野としての矜持を持つべき医学が、高校で習うレベルの初歩的論理学すら分かっていないような過ちを犯して、その問題に気付かないというのは、かなり恥ずかしいことではないかと思うのです。

 現代に生きる私たちは、情報を集めたり知識を詰め込んだりすることは得意だけれども、既存の知識や理論について、一から問い直してみる作業を忘れがちになっているものです。今回は、「規則正しい生活」は良いことだという思い込みについて考えてみましたが、是非皆さんも、つい当たり前のように信じ込んでいるさまざまな事柄について、「本当にそうだろうか?」という問いを一度向けてみてはいかがでしょうか。

次回へ続く)