(前回から読む)

うつ病などで休職中のクライアントが、会社の健康管理室などで「規則正しい生活をしなければ、治りませんよ」と言われたという話を、よく耳にします。
もちろん、主治医である精神科医や心療内科医たちも、このようなアドバイスを必ずと言っていいほど患者さんたちに行なっていることは、私も重々承知しています。かく言う私も、ある時まではそんなアドバイスをしていた一人だったのですから。
しかし、なんでも疑ってみないと気が済まない私は、ある頃からこれは本当のことなのだろうかと強く疑いを抱くようになりました。そして結果としては、この考え方には根本的な間違いがあると確信するようになったのです。
現在は私は、クライアントに「療養中は、眠くなったら寝る、起きられる時間に起きるような自由な生活」を推奨するようになり、自宅療養でよく見られる「昼夜逆転」もそのままで経過を見ていくようにしています。この方法を採るようになって、クライアントには特にマイナスの影響は認められませんし、それどころか、むしろ従来のやり方よりもはるかに良好な経過をたどることが多いという手応えを得ています。
それにしても、なぜこれほどまでに「規則正しい生活」信仰が広まってしまったのでしょうか。この問題について、今回は少々掘り下げて考えてみたいと思います。このテーマは、必ずしもメンタルな問題を抱えていない方たちにとっても、現代人の生活のバックグラウンドを一味違った角度から考えてみる、一つのきっかけになるのではないかとも思うのです。
時計の時間はいつからあったのか?
言うまでもなく、「規則正しい生活」とは、毎朝決まった時間に起きて、決まった時間に食事をし、決まった時間に就寝し、一定の睡眠時間を確保することを指しているわけですが、まずは、ここで基準となっている「時間」というものについて考えてみましょう。
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