特に日経平均のオプション市場は、米国のそれよりも取引量が多くないため、オプション市場を通じて日経平均VIの操作まがいのことができるのではないかと危惧しています。ちなみに、本家の米国でも、VIX指数の操作疑惑が報じられていました。

 今回のVIXインバースETNは、早期償還によって消滅してしまいましたが、のど元過ぎれば熱さ忘れると言う通り、将来また同じような商品が出てくるかもしれません。「日経平均VIインバース」という感じで…。こうした商品には絶対に手を出してはいけません。

「顧客本位の業務運営」はどこへ

 昨年3月、金融庁は顧客本位の業務運営に関する原則を定め、これを多くの金融事業者が採択しています。しかし、今回取り上げたVIXインバースETNの問題については、7つある原則の中で特に、「重要な情報の分かりやすい提供」と「顧客にふさわしいサービスの提供」という2つの原則が守られていなかったように思えます。

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 原則に照らし合わせると、KさんにVIXインバースETNを推奨、販売した証券会社の営業マンは、以下の点で原則に反していた可能性が高い。

  • 株式投資を始めて間もなく、知識が十分にあるとはいえないKさんに、VIXインバースETNのような複雑で、リスクの高い商品を推奨、販売した。
  • 本ETNが逆連動するVIX短期先物指数の価格変動メカニズムについて、Kさんに分かりやすく説明しなかった。
  • 本ETN特有の早期償還条項について説明をしていなかった。
  • 早期償還条項からも想定される本ETNの価格が急落するリスクについて説明をしていなかった。

 証券会社は、投資信託の営業、販売においては、生活者の資産形成の助けとなる長期・積立投資を推進しています。しかし、その一方でこのような「顧客本位」に反するような営業をしていては、信頼を得られないのではないでしょうか。

 私はファイナンシャルプランナーとして、一般の生活者のみなさんには、「投資を通じて世の中をよりよくしながら、自分の資産形成を行いましょう」という話をさせていただいています。

 しかし、そういうみなさんの貴重な投資資金が投じられている金融市場には、今回取り上げたVIX指数に関連するものや、前回取り上げた仕組債以外にも、有象無象の金融商品や市場参加者が存在しています。残念ながら、そういう害のあるものをすべて排除することは難しいのが現実です。

 そこで次回は、投資による長期の資産形成に適した金融商品と、その活用方法などについてお話ししたいと思います。

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