これは、ETFの市場価格が取引所の値幅制限のためにストップ高になってしまったため。翌日には理論価格が下がり、市場価格との乖離は解消しましたが、このETFを保有していた人はもっと高い価格で売却し、利益確定する機会を失ってしまったことになります。
また、先程説明した先物指数の特性のために、このETFの価格は1月まではずっと下落基調を辿っていました。下のグラフは、過去1年間のETFの価格推移を表しています。このETFを昨年の夏に買ったとしても、今回の急上昇でやっと利益が出るかどうかの価格になった感じです。

メディアに出ている記事などでは、「市場の急落に備えてVIX短先ETFを購入しておくとよい」というような内容を見かけることがありますが、このように、VIX指数に連動する金融商品は長期の保有には向いていない、つまり投資商品としては私たちが手を出すべきものではない、ということがお分かりいただけたかと思います。
市場に悪影響も
VIX指数についてもう少し。VIX指数は間接的にも市場に悪影響を及ぼしていることも知っておくといいでしょう。
VIX指数を使って、株式の自動取引を行っている市場参加者がいます。例えば、「VIX指数が上昇して基準値を超えたら、リスクが高まっているということなので株式を売却する」といった具合にです。しかし、このような取引手法は、下図のように、市場に負のサイクルを生じさせて、急落を招く原因を作っているとも言われています。

さらに、オプション市場で仕掛け的な取り引きを行うことによって、VIX指数を意図的に上昇させ、自動取引による売りを誘発して、株価の下落によって儲けようという輩もいます。
VIX指数は、算出の基になっている株価指数とは異なり、上場企業の企業価値による裏付けがある訳ではなく、単なる市場参加者の思惑を数値化したもの。経済的な裏付けのない指数に連動する金融商品や取引手法なのです。
VIX指数は米国の株式市場に関連していますが、日本にもVIX指数と同じものがあります。「日経平均ボラティリティ・インデックス(日経平均VI)」です。日経平均のオプション価格を基に算出されていて、同じような問題をはらんでいると言えます。
Powered by リゾーム?