Kさんが大きな損失を被ってしまったVIXインバースETNとは、いったいどのような金融商品だったのか。
商品名を見ると、これは、「VIX」に「インバース」する「ETN」という意味になります。すみません、全然説明になっていませんね。でも、この3つの単語さえ分かれば、内容が理解できます。それぞれ説明しますね。
まず、「ETN」から。「ETN」というのは、「Exchange Traded Note」の略で、上場投資証券のこと。上場投資証券とは、ある決められた指数に価格が連動するように設計された証券で、東京証券取引所で取り引きされているものです。「ETF(Exchange Traded Fund、上場投資信託)」をご存じの方は、それと似たようなものと理解していただいて結構です。
次は「VIX」。「VIX」とは、米国の代表的な株価指数の1つである「S&P500」の予想変動率を表す指標「VIX指数」のこと。VIX指数は、株価指数が急落すると上昇する傾向があるため、「恐怖指数」とも呼ばれています。
なお、予想変動率はS&P500のオプションというデリバティブの価格に基づいて計算されます。
VIX指数そのものは取り引きされていませんが、VIX指数の先物や、その先物を指数化して、それに連動する金融商品が取り引きされています。
少し整理してみましょう。下の図を見てください。VIX指数は元の株価指数(S&P500)から始まり、金融商品で使われるVIX短期先物指数まで、4段階を経ます。これを見て、「よく分からないし、何だか怖い」と勘が働いた方は素晴らしい! その理由は後程、説明しますね。

最後は「インバース」について。「VIXインバースETN」の価格は、下の式の通りに計算されます。これは簡単に説明すると、VIX短期先物指数と逆の動きをすることになる。だから、「インバース(inverse=逆の)」と名づけられているのです。
= 前日のVIXインバースの価格 × VIX短期先物インバース日次指数の前日比変動率
VIX短期先物インバース日次指数の前日比変動率
= 1 ー VIX短期先物指数の前日比変動率
※円換算の部分は省略
例えば2018年2月6日は、米国株式市場の急落を受けて、VIX短期先物指数が前日の2倍近くに跳ね上がり、変動率は96%の上昇となりました。こうなるとVIXインバースの価格は、逆の動きで96%の下落となる。Kさんが大損したのはこれです。
先物指数の構造的な特性を知る
先ほど図で説明した通り、普段メディアなどで報道される「VIX指数」と金融商品が連動する「VIX短期先物指数(先物指数)」は、似て非なるもの。下のグラフを見てください。最近1年間のVIX指数と先物指数の動きです。

米国株式市場は、「適温相場」と言われる中で堅調に推移し、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は、今年の1月までは低位、“横ばい”で推移してきました(上のグラフの赤い線)。
それに対して、VIX短期先物指数は、横ばいというよりも“右肩下がり”の下落傾向を辿っています(上のグラフの青い線)。
これが、先物指数の構造的な特性を表しています。先物指数はVIX指数が安定している状況においては、時間の経過とともに下落する特性があるのです。
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