株価が急落し、儲け分が吹き飛ぶ

 ある日、株式相場に異変が起きて株価が急落。Aさんが購入していた仕組債は、対象株式の価格がノックイン価格に抵触し、株価の回復を待たず仕組債は満期を迎えました。結果、Aさんの手元には元本の7割ほどの金額しか戻ってきませんでした。その損失はそれまで受け取ってきた高い利息の合計金額を上回る額に…。そう、一瞬で儲けが吹き飛んでしまったのです。

 実はAさんが購入したノックイン型の仕組債投資は、仕組債に組み込まれている早期償還条項とノックイン条項の内容を見る限り、“初めから失敗する確率が極めて高いもの”だったのです。それにAさんは気づいていなかったのです。

理由を以下に説明します。

【早期償還条項】 中毒性を与える内容だった

 記載されていた早期償還条項によると、株価が当初価格から15%を超えて下落しなければ3カ月毎に年率8%の利息を得ることができる。その一方で、株価が上がって当初価格から5%以上値上がりすると早期償還で元本が戻ってくる。

 個別株だと、5%程度の変動はそれほど大きいものではなく、相場が堅調に推移している時だと、すぐ早期償還になってしまう。そうなると、早期償還された投資資金をどうしますか?  多くの方は、また同じような仕組債に投資して、2匹目、3匹目のドジョウを狙うのではないでしょうか。このように仕組債は中毒性があるのです。

【ノックイン条項】 元本保証に近いと誤解を与える内容だった

 ノックイン価格は当初価格の65%と定められています。ノックインに抵触しなければ満期で元本が戻ってきます。すると、8%という高利回りに目がくらんでいる人は、「さすがに今から35%を超える下げはないだろう」と、根拠もなく考えてしまう。元本保証に近い感覚を持ってしまうのです。

 この早期償還条項とノックイン条項が投資家に与える悪影響を、模式的に表したのが次の図です。

 この仕組債を購入した人は、株価が堅調に推移する間は高い利息を受け取り、株価上昇によって早期償還すると、また同じような債券を購入するということを繰り返すことが多い(図の上グラフ)。

 一方、ノックイン価格は債券発行時の株価に対して、65%というように相対的に定められているので、ノックイン価格も新規に発行されるたびに上昇していきます(図の下グラフ)。

 そんな状況下で株価が急落するとどうなるか。ノックイン価格に抵触して元本の65%分しか償還されないのです。それまで受け取っていた高い利息を合計しても、35%分の損失をカバーできません。

 もし最初にノックイン型の仕組債ではなく、対象株式自体を買っていたらどうでしょう。株価が急落しても、急落後の価格は当初の価格よりまだ3割程上です。そのまま保有していれば、再び高値を超える可能性もあります。

 いかがですか?  ここまではノックイン型という株価に連動する仕組債を取り上げて問題点を解説しました。しかし、ノックイン型に限らず、仕組債は危険性があります。ここではさらにその危険性について、一般的な仕組債全体のスキームを見ながら説明します。

仕組債の「からくり」を学ぶ

 仕組債とは「ある仕組み」を使って、利回りが高く見えるようにした債券です。ここで言う「ある仕組み」とは先物やオプションといったデリバティブのこと。つまり、仕組債とは、普通の債券とデリバティブを組合わせることによって、利回りが高く見えるようにした債券なんです。

 普通の債券は、利率が市場金利の実勢に基づいて決定されます。例えば、個人向け国債の利率は現在0.05%です。従って先程の利回り8%の仕組債は、デリバティブによって高利回りが実現できていることになります。

 言い換えると、仕組債を買うということは、国債を買って、それとは別にデリバティブの取り引きをすることと同じなのです。

 加えて、一般的に仕組債に組み込まれているデリバティブ取引とは、「オプションの売り(オプション取引)」という、デリバティブ取引の中でもリスクが高い形態なのです。