さらに、政府は人生100年時代における多様なライフプランに対応できるように、70歳を超えても働く意欲がある人のために、繰り下げ可能な年齢を75歳にして、さらにその分年金を増額する案を検討することを決めました。これは、下の図が示すとおり、現行の受給方法は変えずに、さらに私たちの選択肢を広げるものなのです。

[画像のクリックで拡大表示]

 残念ながら、ここでも誤解があるようです。

 受給開始年齢を75歳まで引き上げることを検討する、というニュースが報道されるとSNS(交流サイト)などでは、「やっぱり年金はもらえない」などという批判的なコメントを多く見かけました。

 さらに、日本経済新聞社が実施した下のような世論調査でも、反対が多いという結果になりました。

[画像のクリックで拡大表示]

 そもそもこのような世論調査をする必要があったのでしょうか。

 この改正は、先に述べたとおり、私たちのライフプランの選択肢を広げるだけで、なんら不利益になるようなものではないはずです。それなのに、その是非をわざわざ世に問う新聞社の意図に疑問を感じてしまいます。また、それに対して反対する人が多いということも、年金制度に関する誤解の根深さを表しているように思います。いや、それとも新聞社は私たちが年金制度を正しく理解しているか、テストするためにこの調査を行ったのでしょうか……。

 公的年金の繰り下げは、長生きリスクに対する備えとして有効な選択肢であるということを覚えておいて損はありません。

3.民間の金融商品や生命保険による備えは?

 民間の金融機関や生命保険会社でも、老後の生活資金を備えるための商品を提供しています。今回は、「トンチン年金」と呼ばれている、最近注目されている保険商品を見てみましょう。

次ページ トンチン年金 vs 公的年金の繰り下げ