電動航空機の未来はこれから数年で決まる

 SureFlyにせよ、BlackFlyにせよ、そしてX-57にせよ、電動モーターという新しい動力を得て、「では、電動モーターに相応しい機体の設計はどんなものか」という見直しが急速に進んでいることが感じられる。今、我々が知る航空機の設計は、実は炭化水素系燃料を使う内燃機関を前提としたものだったと言えるだろう。今後数年で、様々な形式が急速に試験されるだろう。

 過去にも同じことがあった。1903年のライト兄弟の飛行から、第一次世界大戦まで、様々な機体形式が百花繚乱のように現れ、第一次世界大戦後に、現在我々が知る「主翼を前に、尾翼を後ろに」という標準的な航空機の形式が確立した。これと同じ現象が、今後数年で急速に進み、おそらく2020年代半ばには「電動モーターを使用する航空機の標準的な形式」が確立するのではないだろうか。

 そのような電動航空機は、当然使われ方も変わってくる。垂直離着陸機能を生かせば、住宅地での離発着も考え得るし、電動モーターの制御性の良さを生かし、完全自動操縦でパイロット免許を持たないお客が乗る“無人エアタクシー”もありだろう。もちろん、現状の旅客機のような高い安全性を持つ機体を開発するのは容易なことではない。それでも中長期的には社会全体のモビリティが一変する可能性も見据えておく必要がある。

 安全性を確保しつつ使い方を変えるためには、法律や社会インフラなども早手回しに揃えていく必要がある。今回、オシコシのコンファレンスでは、そのあたりも議論されていたそうだ。参加したオリンポスの設計技師Y氏によると「住宅地の近くに、電動垂直離着陸機の発着場を整備すべきだ」というような意見も出ていたということだ。

周回遅れどころではなさそうな日本

 このような世界の情勢と日本の現状を比べると、日本は周回遅れどころか二周回、三周回遅れになっていることに気が付く。世界では1980年代以降、有人・無人、あるいはバッテリー動力、太陽電池動力など、様々な電動航空機の研究が徐々に進められてきた(電動モーターを動力に使う試みはそれ以前からあった)。その結果、かなりの技術がすでに蓄積され、さらなる応用を待っている状態だ。

 いくつか例を挙げるなら、2015年から2016年にかけては、スイス連邦工科大学が開発した太陽電池動力の電動有人機「ソーラーインパルス」が世界一周飛行を成功させた。欧州エアバスは電動航空機に数百億円規模の投資をしており(エアバス、電動航空機の研究開発に数百億円投資:日経XTECH 2018年4月18日を参照)、様々な形式の試験機を開発している。

 シェアタクシーで急成長したUberも、次世代のエアタクシー向けに垂直離着陸可能な電動航空機の研究開発を進めている。

エアバスが2014年に飛行させた電動有人機「E-Fan」。E-Fanは2015年にドーバー海峡横断に成功している。